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抜歯後はドライソケットに注意

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

抜歯後はドライソケットに注意

皆さんは抜歯後に起こり得るドライソケット(Dry Socket)という言葉を聞いたことはありますか? 抜歯した後には骨の凹み(抜歯窩)ができ、その凹みは血の塊である血餅で満たされます。この血餅が、抜歯後の治癒には重要な役割を果たします。ですが、いろいろな理由で抜歯後の凹みに血餅ができず、むき出しになった骨が過度の炎症や感染を引き起こし、激しい痛みに襲われることがあります。この治癒不全の状態を、ドライソケットと呼びます。そんな、起こって欲しくないドライソケットについて、今回は書いていきたいと思います。

ドライソケットの発生率

下顎の埋伏智歯部(親知らず)や臼歯部(奥歯)の抜歯で起こりやすいのですが、通常は5%程度と言われています。喫煙者に多く、男女共に起こり得ますが、どちらかと言うと女性に起こりやすい傾向があります。

ドライソケットの原因

下記のような原因が考えられます。

1.血液の供給不足

下顎の智歯部などの局所麻酔には通常、血管収縮薬が入っており、過度の使用により出血が抑制され、血餅ができにくくなります。抜歯で免疫力が低下すると感染が起こりやすくなり、ドライソケットになる場合があります。下顎の智歯部に関しては骨が緻密で、血管が比較的乏しく、抜歯自体も大掛かりな手術になることが多いので発生率は高まります。また喫煙は、ニコチンなどにより血管を収縮させ、血餅をできにくくします。

2.血餅の流出

過度のうがいや飲み物を飲む際のストローの使用により、抜歯窩の血餅が流出する恐れがあります。うがいは優しく行い、ストローの使用は避けるなどの注意が必要です。

3.血餅の溶解

女性ホルモン、エストロゲンの影響。特に避妊用ピルの服用は大きな要因となり得ます。女性は生理周期によって、排卵前にエストロゲン、排卵後にプロゲステロンという2つのホルモンが分泌されます。生理中は、このホルモン分泌が2つとも低下し、抵抗力が大きく落ち込みます。そのため、時期的に抜歯には適しておらず、抜歯窩の感染や炎症からドライソケットにもなりやすいと言えます。また、避妊用ピル(女性ホルモンのあるもの)は血栓の誘因になり得る一方で、血餅を溶かすように働くものもあります。避妊用ピルを服用している場合、服用開始から1〜3週目は抜歯を避け、3〜4週目の休薬時期に抜歯するのが賢明です。

まとめ

女性は生理周期を考慮し、ピルを服用している人は服用を中断して抜歯する(特に下顎の智歯部の場合)など、ドライソケットを予防するための抜歯計画をおすすめします。今回の情報を頭の片隅に入れておき、抜歯の際には注意するようにしてください。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748