Home 美容・健康 私たちの命を守るヘルスケア(旧・女性の命を守るヘルスケア) 見過ごされがちな在米日本人...

見過ごされがちな在米日本人の健康課題〜私たちの命を守るヘルスケア

がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。

見過ごされがちな在米日本人の健康課題

米国の医療システムに戸惑って

「日本人は健康だから大丈夫」

アメリカで暮らしていると、そんなイメージに出合うことがあります。アジア系の人々は教育水準や所得水準が高く、健康状態も良好な集団としてひとくくりに語られることが少なくありません。確かに日本人には健康意識が高い人が多いかもしれませんが、それでも医療を必要とする場面はあります。移民として暮らす中で医療を受けることは、母国で医療を受けるのとは事情が大きく異なります。私自身もさまざまな壁にぶつかりました。

それなりに話せるつもりだった英語が、医療の場では思うように通じませんでした。湿疹で受診した際、自分の症状を十分に伝えられず不安を感じました。日本で看護師として働いた経験があっても、異なる文化や医療システムの中では戸惑うことばかりでした。日本にいた頃のように物事が進まず落ち込んだ時期もありました。そうした経験を通して、言葉や文化の異なる環境で暮らす人たちは、どれほどの困難を抱えているのだろうと考えるようになりました。

もともと私は、日本で暮らす移民の健康について学んでいました。しかし今度は自分自身が移民となり、マイノリティーの立場になったことで「異文化の中で暮らす人々の健康」をより身近な問題として捉えるようになったのです。

そこで私は、アメリカに住む日本人の健康について知るため、関連する論文を探し始めました。ところが、移民の健康に関する研究が数多く行われているアメリカでも、日本人に焦点を当てた研究は思っていた以上に少なかったのです。

「モデル・マイノリティー」が覆い隠すもの

その後、大学院でコミュニティー・ヘルスを学ぶ中で「モデル・マイノリティー」という言葉を知りました。アジア系の人々は勤勉で社会的に成功しており、健康上の問題も少ないという固定観念です。一見すると肯定的なイメージに聞こえますが、実際に存在する課題を見えにくくしてしまう危険性があります。

モデル・マイノリティー」とされる在米日本人の中にも、健康や医療について不安や困りごとを抱える人がいます。「保険の仕組みがよくわからない」「健康のことは気になっているけれど、つい後回しにしてしまう」こうした声を耳にするたび、日本人コミュニティーの課題は「存在しない」のではなく「見えていない」のではないかと思うようになりました。

日本人が知っておきたい胃がんリスク

私が特に関心を持っているテーマの一つが、がん検診です。がんは誰にとっても重要な健康課題です。アメリカでは多くの人種で心臓病が死因の第1位となっているのに対し、アジア人ではがんが第1位とされています。このことは、アジア系の人々がほかの集団とは異なる健康リスクやニーズを抱えている可能性を示しています。在米日本人が抱えるリスクやニーズも十分に知られているとは言えません。

胃がんはその一例です。アメリカ全体でみると胃がんの発症率は比較的低いのですが、日本人はピロリ菌の感染歴や長年の食習慣などの影響から、アメリカのほかの人種とは異なるリスクを抱えていることが知られています。和食は健康的な食事として評価されていますが、その一方で、みそやしょうゆ、漬物など塩分を多く含む食品も使われており、こうした食習慣は胃がんリスクとの関連が指摘されています。「日本人は健康だから大丈夫」というイメージだけでは見えてこないリスクもあります。自分自身の背景や家族歴、生活習慣を理解し、適切な検診について知ることが健康管理の第一歩になります。

私は、健康でいることは全ての人の権利だと信じています。

在米日本人の健康課題には、まだ十分に知られていないことが多いと感じています。だからこそ、一人でも多くの方が必要な情報にたどり着き、自分や家族の健康について考えるきっかけになればと願い、FLAT・ふらっとと協働してがん検診に関するウェブページを作成しました。胃がんや大腸がんをはじめ、アメリカで受けるがん検診に関する情報をまとめています。ぜひウェブページもご覧ください。

FLAT・ふらっと 在米日本人のためのがん検診情報

古庄遥歌■名古屋大学で看護学修士課程を修了後、病院勤務を経て渡米。ワシントン大学大学院にてCommunity Health & Social Justiceを学び、2026年に修士課程を修了。日本人移民の健康課題に強い関心を持ち、在学中にFLAT・ふらっとと出会う。以来、同団体と協働してがん検診に関するプロジェクトに取り組み、現在はプログラムコーディネーターとして活動している。

FLAT・ふらっと
2013年から続く乳がん・婦人科がん患者サポート団体のJapanese SHAREが、2023年4月1日より、ニューヨークを拠点とした非営利団体、FLAT・ふらっとに活動の場を移行。乳がん・婦人科がんのほか全てのがん患者、高齢者、スペシャルニーズのある子どもの保護者を対象とし、在米日本人コミュニティーを健康と医療の面から支える。問い合わせ:info@flatjp.org