教育への思いを胸に、子どもたちの未来の扉を開く
シアトル日本語補習学校第26代校長 鹿屋純一さん
取材・文:西東円佳
「教育とは流水に文字を書くような果ない業である(森信三の言葉)。だからこそ、子どものためになることを真剣に考えて取り組んでいきたい」そう語る鹿屋さんはシアトル日本語補習学校を「子どもたちの可能性を限りなく広げる学校」と表現します。インタビューを通して鹿屋さんが大切にしてきた教育観と、シアトル日本語補習学校の魅力に迫ります。
鹿屋純一■
鹿児島県出身。大学時代は名古屋市で過ごし、法学部で刑法を専攻。卒業後、鹿児島県職員として帰郷。友人の勧めで勤務の傍ら教員免許を取得し、20代後半から公立小学校教員として再出発する。国語科の研究を志すも、次第に算数科や視聴覚教育に傾注。2023年3月の定年退職まで海外(シンガポール)を含む10校で勤務。現在は文部科学省派遣教員として本校に着任し、2年目を迎えている。
鹿児島県出身。大学時代は名古屋市で過ごし、法学部で刑法を専攻。卒業後、鹿児島県職員として帰郷。友人の勧めで勤務の傍ら教員免許を取得し、20代後半から公立小学校教員として再出発する。国語科の研究を志すも、次第に算数科や視聴覚教育に傾注。2023年3月の定年退職まで海外(シンガポール)を含む10校で勤務。現在は文部科学省派遣教員として本校に着任し、2年目を迎えている。―学び方次第で生きる、年間40日の「日本語留学」
シアトル日本語補習学校は、日本の学校教育を基本としてアメリカという環境の中で学ぶ、いわば二つの教育文化の「良いとこ取り」ができる学びの場。多様な背景を持つ仲間との出会いや、異なる文化や価値観に触れるなかで、違いを受け入れ、他者を尊重する姿勢が育まれる。子どもたちは教科学習にとどまらず、広い視野と多面的なものの見方を自然と身に付けていく。
最大の特徴は、週に1度、年間およそ40日の「日本語だけの環境」。アメリカの日常から離れ、日本の教科書を使用して学び、日本の生活習慣やマナー、文化の背景に触れる時間は、まさに「ミニ日本留学」だ。ここで得た経験は、子どもたちのアイデンティティーの核となり、将来の揺るぎない土台となる。また、多様な背景を持つ教職員や家庭が集まるコミュニティーも大きな魅力だ。経験や知識が共有され、子どもたちの「引き出し」が増えていく。さらに、幼稚園児から高校生までが同じ校舎で学ぶ環境では、年齢の異なる子どもたちが日常的に関わり合う。上級生が下級生を気にかけ、下級生が上級生の姿に学ぶ。高学年になるほど学びへの姿勢はより主体的になり、現地校と補習学校の両立を通して養った力は、卒業後の大学生活や社会でも確かな成果として表れている。
日本語と英語に加え、現地校で第三言語へ挑戦する児童生徒も少なくない。ここで育まれる吸収力と異文化理解は、世界で生きていくための大きな強みとなり、柔軟で適応力のあるグローバルな人材へとつながっていく。

先生の話に真剣に耳を傾ける子どもたち

補習学校のボランティアグループ「おはなし会ひみつの本箱」による、子どもたちが大好きな読み聞かせの時間
―児童生徒数が多いからこそできる行事で、子どもたちの心身の健康と成長を応援
補習学校の授業は、教師からの一方向の学びではない。子どもたち自身が考え、動き、学習活動をつくり出せる環境づくりを、常に大切にしているという。上級生の教室では、①自分で考える②ペアで話し合う③グループで深める④全体で共有する、というプロセスを繰り返す中で、子どもたちの自信が育っていく様子を日々実感しているそうだ。
補習学校では、日本の学校のように体育や道徳の授業があるわけではない。しかし、学びと運動は本来密接に結びついている。そのため、運動会やスポーツ大会は特別な意味を持つ。互いの力を認め合い、協力する喜びを知ること。人間関係が深まり、道徳的な心情が育つ時間。昨年できなかったことが今年はできるようになったと実感する瞬間。これら一つ一つが子どもたちを大きく成長させる。また上級生の姿を見て「自分もあんなふうになりたい」と憧れを抱く経験ができるのは、児童生徒数の多い補習学校ならではの価値だと語る。
―設立当初から変わらない教育姿勢「きびしく学ぶ、たのしく学ぶ、ゆたかに学ぶ」

年に一度の中高部スポーツ大会。一致団結して臨み、クラスの絆と成長が刻まれる
シアトル日本語補習学校には、日本を離れアメリカで生活しながら豊かな経験を積んできた教職員がそろう。共通しているのは、児童生徒への愛情を持って向き合う姿勢。ただし、愛情と甘やかしは違うという認識のもと、身に付けてほしいことは毅然 と伝える。そのバランスを大切にしながら授業をつくり、児童生徒の成長にしっかり寄り添っている。
校歌にも歌われている「きびしく学ぶ、たのしく学ぶ、ゆたかに学ぶ」という姿勢は、単に学力を高めるためのものではない。子どもたちが将来ぶれることなく成長していくための土台となるものだ。実際に、多くの卒業生が確かな力を培い、それぞれの道へと巣立っていった。
一方で、社会も教育も常に変化している。これからも日本の教育が目指す方向性をしっかりと理解し、その良さをシアトルで学ぶ子どもたちにどのように届けるかを考え続けたい。子どもの中にある「学びの種火」を守り育て、その火を子ども自らが燃やし続けられるような授業や学校づくり、さらには人生の生き方につながる種まきを進めていきたい。補習学校は「厳しい」というイメージを持つ家庭もある。宿題が多いなど、学びの定着には一定の負荷が伴うのも事実だ。しかし、それは子どもが確かな力を身に付けるために避けては通れないものと理解してほしい。
最後に、学び以外の魅力にも触れたい。たとえば、毎週土曜日に持ち寄る手作り弁当。お弁当を頬張る子どもたちの姿は本当に幸せそうで、温かな空気が広がっている。子どもが学校に通う時期にしか育めない親子の絆が深まる時間。そんな温かな記憶を育む場所でもあってほしいと願っている。
シアトル日本語補習学校
Seattle Japanese School919 124th Ave. NE. #207, Bellevue, WA 98005
☎425-643-1661、office@seattlejschool.org
https://seajschool.org
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