シアトルの知恵ノート
知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。
2024年版:新型コロネウイルス事情
2020年1月に新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の症例が米国で初めて確認されてから、4年が経ちました。ピーク時ほどではないものの、パンデミックは終息に至っていません。今シーズン、国民の3割までがCOVID-19に罹患すると予想されています。
千原晋吾■山梨医科大学卒。横須賀海軍病院、飯塚病院初期研修、コネチカット大学内科プログラムのレジデントおよびチーフ・レジデント、ラッシュ大学病院感染症科フェロー、ユタ大学臨床微生物学フェロー、獨協医科大学感染制御・臨床検査医学教室講師。2011年に再々渡米し、南イリノイ大学感染症科講師を務め、2014年3月よりバージニア・メイソン・フランシスカン・ヘルス感染症科指導医。
Virginia Mason Franciscan Health
1100 9th Ave., H7-ID, Seattle, WA 98101
☎206-341-0846、shingo.chihara@vmfh.org
www.vmfh.org
現在の感染状況とワクチン接種について
JN.1は他のオミクロン株派生型と重症化率に変わりはありません。症状としては、発熱、悪寒、咳、筋肉痛、呼吸苦、のどの痛み、頭痛、疲労感、嗅覚や味覚の変化などがあり、インフルエンザ、RSウイルス感染症の症状と似ています。
2023年9月に開始された米国のCOVID-19最新ワクチンの接種率は、小児で11%、成人で21%。最も重症化率の高い65歳以上のグループでは40%です。ファイザー、モデルナ、ノババックスの最新ワクチンは、JN.1に対しても、重症化および入院率を減少させるとの報告があります。2月1日発表の研究論文によると、最新ワクチンの接種、非接種での比較調査では、症状を伴うCOVID-19の予防に54%有効との結果でした。
もし感染してしまったら?
多くの場合、自宅療養で完治しますが、重症化率が高い50歳以上の人、ワクチン接種を受けていない人、基礎疾患がある人は、発症から5~7日以内なら抗ウイルス薬が適応される可能性も。ニルマトレビル・リトナ ビ ル(Nirmatrevir/ritonavir)、レ ム デ シ ビ ル(Remdesivir)、モルヌピルビル(Molnupiravir)が治療薬として使われます。まずはかかりつけ医に連絡をして、治療適応・薬剤の相互作用などを検討のうえ、治療プランを立てます。
「コロナ後遺症」に注意
症状としては、疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、味覚障害、嗅覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などが挙げられます。感染から3カ月以降にこうした症状が2カ月以上続き、ほかに症状の説明がつかない場合に診断されます。症状の持続期間は週単位から月単位までと人によって異なり、中には年単位で持続するケースも。統計的には、最初の罹患時に重症化した人ほど、後遺症のリスクが高まります。基礎疾患を有する人やワクチン未接種者は高リスクと言われています。
罹患や後遺症を防ぐためにも、やはりCOVID-19の最新ワクチンの接種が大事。適応があれば、インフルエンザ、RSウイルス感染症の予防接種も受けるようにしてください。暴露、もしくは症状がある場合は外出を控え、自宅で検査を行いましょう。手洗いの徹底、必要に応じたマスクの着用が推奨されます。無料で配布されている検査キットを注文して、家に置いておくと診断がスムーズです(www.covid.gov/tools-and-resources/resources/tests)。
参考リンク
CDC
https://www.cdc.gov/respiratory-viruses/prevention/precautions-when-sick.html#print