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アメリカ永住権審査、公的扶助の判断基準が変更〜知っておきたい身近な移民方

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。

アメリカ永住権審査、
公的扶助の判断基準が変更

移民局(USCIS)は7月16日、グリーンカード(米国永住権)申請などの審査における公的扶助(Public Charge)について、2022年にバイデン政権下で導入された基準見直しを発表しました。新しい判断基準は9月18日に施行されました。これにより、9月18日以降に提出される対象申請には、新しい基準が適用されます。

公的扶助とは? 対象となる申請

公的扶助は、アメリカ政府の経済的支援に依存する可能性があるかどうかを判断する際に用いられる移民法上の用語です。一部のグリーンカード申請では、申請者が将来、公的扶助に該当する可能性があるかどうかが重要な判断材料の一つになります。

この規定は、全てのグリーンカード申請に適用されるわけではありません。難民申請や暴力被害者救済法(VAWA:Violence Against Women Act)に基づく自己申請などは対象外です。一方、米国市民との結婚による申請、米国市民が親を呼び寄せるための申請、雇用ベースの申請、抽選永住権の当選者による申請などは対象に含まれます。

Form I-864と公的扶助審査の違い

家族ベースのグリーンカード申請では、原則としてForm I-864(Affidavit of Support/扶養宣誓供述書)という書類の提出が求められます。これは、申請者である外国人がグリーンカード取得後にアメリカ政府の公的給付に頼ることがないよう、スポンサーが経済的な支援を約束する書類です。つまり、スポンサーは通常、一定以上の収入や資産があることを証明しなければなりません。このForm I-864の提出要件と公的扶助規定は、同じものではありません。

まず、公的扶助の適用対象となる全てのケースで、Form I-864の提出が必要となるわけではありません。例えば雇用ベースのグリーンカード申請は、公的扶助の対象ではある一方で、Form I-864の提出は原則必要ありません。したがって、申請者にForm I-864の提出が求められていないという事実だけをもって、その申請者が公的扶助の適用対象ではないということにはなりません。

反対に、Form I-864の要件を満たし、適切に提出した場合でも、それだけで公的扶助に該当しないと判断されるわけではないケースもあります。Form I-864は、あくまで申請者が将来的に公的扶助に該当する可能性があるかどうかを判断する際に考慮される要素の一つです。

Form I-485も新様式に。旧版は猶予期間なし

この公的扶助規定の変更に伴い、グリーンカードのアジャストメント申請に使用するForm I-485(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)も改訂されました。

•9月18日より前:2025年1月20日版のみ受け付けられます。

•9月18日以降:9月18日版のみ受け付けられます。

移民局(USCIS)は、9月18日以降に郵送またはオンラインで提出された旧版Form I-485は受け付けないとしています。

審査官が考慮する要素と広がる裁量

移民局の審査官は、申請者が公的扶助に該当する可能性を判断する際、申請者の年齢や健康状態、家族構成、資産や経済状況、教育、スキルなどを総合的に考慮します。Form I-864が提出されている場合は、その内容も考慮されます。申請者が過去に受けた公的給付も審査の対象となりますが、9月18日以降は、対象となる公的給付の範囲が広がり、審査官の裁量もこれまでより大きくなります。

申請前の準備が重要に。保証金制度も

公的扶助以外の審査基準を満たしていると審査官が判断した場合、申請者から「Public Charge Bond」と呼ばれる保証金を受け付ける制度もあります。この制度は、申請者が公的扶助に該当しないことを保証するために、保証金を支払うか、保証会社による保証を提出する制度です。

保証金の額は、審査官が申請者の公的給付を受ける資格や実際に受給する可能性などを踏まえて判断するもので、移民局から提出に関して正式に案内を受けた申請者のみが利用できる制度です。申請者が自ら利用できるものではありません。

申請前に確認しておきたいこと

今回の変更に伴ってUSCISが公表したガイダンスは、審査官が公的扶助を理由にグリーンカード申請を却下するかどうかをケースごとに判断する際の指針であり、審査官の判断方法を一律に定めたものではありません。このことからも、申請者それぞれの事情を考慮して判断する審査官の裁量が、これまで以上に広がったことがわかります。過去に公的給付を受けたからといって、自動的に申請が却下されるわけではありませんし、スポンサーの年収や資産がForm I-864の要件を満たすことができなければ、これまでと同様、ジョイントスポンサーを利用することもできます。9月18日以降にグリーンカードを申請する予定のある人は、新しいガイダンスを考慮し、念入りに準備することが重要です。

五十畑 諭
神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 カンザス州およびワシントン州弁護士協会会員、米国移民法弁護士協会会員。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118