大統領命令第13788 号「Buy American and Hire American」
トランプ大統領が今年4月18日に発行した大統領命令第13788号は「Bu American an d Hire American」(略してBAHA)というタイトルが付けられています。BAHAの内容には、米国政府のポリシーとして、経済と国家安全保障の促進、経済成長、十分な給与額の雇用創出、中産階級層の向上、米国製造業と国防関連産業の支援を政府としてできる限りするということと、米国人労働者の給与と雇用率上昇のために、外国人労働者の米国入国を規制する移民法を厳密に執行・監督するということの二つがあります。
BAHAには、米国政府の関連各省に対して直接のアクションを促している部分があります。この大統領命令の第5章(a)節には、国務省、司法省、労働省、国土保安省は、米国人労働者の雇用と利益に沿うための移民システムの整合性のために、新しいルールや方針を策定することとあります。これら新しいルールや方針には、移民法詐欺や悪用を防ぐためのものが含まれます。また同じ章の(b)節には、特にH-1Bビザが名指しされて、国務省、司法省、労働省、国土保安省はH-1Bビザが高度技術者や高給のポジションにのみ利用されるように改善策をまとめることとあります。
BAHAにおいて移民法に関する言及は、これらの点のみです。H-1Bビザがこの大統領命令で名指しされているのは、H-1Bビザが一般的に「外国人労働者が米国人の職を奪っており、そのため米国人労働者の賃金が上がっていない」という印象を持たれているからでしょう。
米政府機関が新たに規則を制定したり、今までの方針を変更する場合は、行政手続法により一般大衆からの意見を聞く必要があります。移民局は7月26日に、今回の新ルールに関して一般からの意見を聞く機会を設け、760人以上が参加しました。移民局は新ルール策定に関してこれらの意見を参考にするとのことです。
移民局は同時に、H-1Bビザを含むビザ関連の詐欺・悪用に関しての連絡ホットライン、E-Verifyと呼ばれる雇用主のための就労許可証確認システムを紹介し、さらにH-1Bビザに関するさまざまな統計を情報公開しています。今回発表されたのは、過去2年間の雇用主別に分類された認可ケースの統計、過去10年間の出身国・業種・役職・給与額・年齢別の統計、2016年会計年度の議会への報告書です。
これらH-1Bに関する統計から読み取れるのは、一般的な印象とは違うものです。統計からはH-1B労働者の平均年収が92,317ドルであること、約半分のH-1B労働者が年収100,000ドルを超えていること、また約6割は修士号以上の学歴を持っていることも分かりました。ビデオ・ストリーミング会社のNetflixで働くH-1B労働者は、平均年収322,405ドルを稼いでいます。これらの統計は、「H-1B労働者が米国人の職を奪っている」というものとはかけ離れていて、実際は、H-1Bビザが米国企業の雇用の隙間を埋めるものとして機能していることを示しています。
BAHAを受けて、最近のH-1B審査においては、給与額の低いH-1B申請ではポジションが本当に専門職なのか、また複雑な職務はもっと高い給与額がふさわしいという、今までにはあまり見られなかった質問が出るケースが増えています。
[知っておきたい移民法]