クマに遭遇するのは普通のこと?
アメリカに住んでいるとさまざまな野生動物を目にする。日課の散歩中によく見るのはウサギとリス。シカは年に数回ほど見かける。3メートルほど先にいたときは、さすがにその大きさに少し驚いた。しかし、シカには危険な印象がないため、むしろ愛らしくさえ感じる。
ただ、穏やかな動物ばかりではない。筆者の住む地域では、日本の野良猫なみにコヨーテが徘徊している。一見、野良犬のようだが、無表情な顔とやせた体つきから野生のにおいがぷんぷんと漂う。ある日、散歩中に一人の女性が「コヨーテ2頭が後をついてきてとても怖かった。これは普通なの?」と話しかけてきた。小さい子どもが一緒にいるときは注意すべきだが、日常的によく見るし普段は人を襲うことはないので必要以上に怖がることはないと伝えた。そう、コヨーテは見慣れてしまえば怖くない。
こちらを見つめるコヨーテ。連日、同じ場所にたたずんでいた
平日の散歩コースは単調で飽きるため、休日はいろいろな公園(山)へ出かける。はたから見ればハイキングだが、ハイカーほど準備万端ではなく、ただのウォーキング気分。軽装でのんびり歩く。
先日、ある山で生まれて初めて野生のクマを見た。幅の広いトレイルを歩いていると、6メートルほど先の脇の茂みの中で、後ろ足で立ちこちらをじっと見ている大きな黒い影が。一瞬の出来事だったため、クマだと認識するまでにけっこうな時間がかかった。おそらく数十秒。「あれは一体なんだ? クマか」という脳内での認識処理に時間を要したのだ。最初はただの大きい人形に見えたが、クマだと分かった瞬間恐怖が込み上げた。体が凍りつくとはまさにこんな感じなのかと実感。
クマと遭遇した場合は背を向けず、ゆっくりと後退するべきとされる。だが、焦りから反射的にくるっと背を向け、来た道を早歩きで戻った。道中、クマの出没をほかの人に伝えなきゃという使命感に駆られた。まずはブラックベリーを楽しそうに摘んでいた小さい子ども連れの家族。
「クマね、何回か見たことあるよ。このあたりに3頭ほど住んでるんだよね。前に見たときは木に登ってたよ」とのこと。次に見かけた一人で歩いていた年配の人も「クマなら何回か見たことあるよ。目の前に現れたときは『前に進みたいから、どいてくれない?』って大声で言ったらどいてくれたことがあったよ」と武勇伝まで語ってくれた。
おびえていた私とは対照的に、どちらも意外なほど冷静な反応に開いた口がふさがらない。近所をうろつくコヨーテに見慣れたように、クマもいつか見慣れる存在になるのかも?















