シアトル・アートブック・フェア 2025
取材・文:山本拓実
5月10日・11日の2日間にわたり、シアトルの歴史的建築「ワシントン・ホール」で第3回シアトル・アートブック・フェア 2025が開催されました。
会場は多くの人でにぎわい、思い思いにお気に入りのアートブック探しを楽しんでいた
アートブックとは、アーティストやデザイナー、作家たちが制作する広義の出版物で、「本」というメディアそのものを再解釈し、出版行為を芸術的実践として捉えるものだ。アートブック・フェアは、そうしたアートブックや関連グッズを展示・販売するイベントで、シアトルはもちろん、ニューヨーク、東京、バンコクなど世界各地で開催されている。
今年のフェアには、地元のワシントン大学デザイン学部(UW Division of Design)をはじめ、国内外から85以上の出展者が参加した。各ブースにはアートブックに加え、ポスターやステッカー、トートバッグなど、多彩な印刷物やグッズが並び、来場者は手に取りながら出展者本人と会話を交わし、作品の背景や制作意図を聞くことができるようになっていた。
筆者は11日の午前中から訪れたが、3フロアにわたる会場は来場者であふれ、通行も難しいほどの盛況ぶりだった。講演会や子ども向けのワークショップ、小冊子制作体験なども企画され、単なる即売会にとどまらない体験型の芸術イベントとして構成されていた。
特に印象に残ったのが、在米クリエイター・八多沙織(saori8ta)さんのブースだ。シルクスクリーンで印刷されたヤギと深い紫のブックカバーが目を引くアートブック『ヤギ部のさおちゃんへ――。』(英題:The goats my father talked about)は当日完売するほどの人気を集めていた。本作は、作家が幼少期に中東で働いていた父から届いたヤギの写真や電子メールを再編集したエッセイで、繊細なデザインの中に、父と娘の関係性を映し出す力強いメッセージが込められている。
在米クリエイター・八多沙織(saori8ta)さんの作品
アートブック・フェアは、創作物の魅力を実際に手に取って味わえる貴重な場となっている。開催時にはぜひ会場に足を運び、お気に入りのアートブックを見つけてほしい。


















