注目の新作ムービー
極甘とわかって食べる豪華なケーキ
Downton Abbey: A New Era
(邦題「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」)
「ダウントン・アビー」は、英国の架空の地方にあるダウントン・アビーの邸宅を舞台に、20世紀初頭のエドワード朝時代後における階級社会のあり方を、貴族であるクローリー家とその使用人たちを通して問い大ヒットしたドラマシリーズ。本作は映画化第2弾で、2019年の第1弾からの未解決案件その後を追う内容だ。
ドラマを観ていない友人に、「映画だけでも面白い?」と聞かれて返事に窮した。とにかく登場人物が多い群像劇。そのひとりひとりが抱える孤独や秘密、不遇などを6シーズンかけてじっくり描いてきた。登場人物それぞれの去就が気になる巧みな作りもあり、背景を理解していないと面白味は半減する。何人かの不遇はシリーズ中に解決しファンをホッとさせつつ、積み残し案件はあり、本作でも何人かに幸せが訪れる仕掛けだ。
ダウントンに残ったロバートの長女で実質的当主、メアリー(ミシェル・ドッカリー)は、邸宅の維持にかかる膨大な費用に頭を悩ませていた。そんな中、邸宅で映画を撮りたいとの依頼があり、使用料を修繕費に充てようと承諾する。あっと言う間に撮影隊が邸宅に到着して、使用人たちは邸宅の華やかな変化に色めき立つ。
ただ、陽光降り注ぐ南フランスで優雅な時間を過ごす貴族の姿や、映画撮影のために使用人たちに訪れた幸運など、やや過剰とも言える観客サービスには辟易。ドラマにリアリティーを求める人には不向きかもしれない。同じ貴族と使用人を題材とする作品でも、1939年製作のジャン・ルノワール監督による「ゲームの規則」は、相容れない規則を持つふたつの世界と人間社会の構造を深く見つめた傑作である。
つまり本作は、極甘とわかって食べる豪華なケーキみたいなもの、かもしれない。
Downton Abbey: A New Era
邦題「ダウントン・アビー:ア・ニュー・エラ」
上映時間:2時間5分
写真クレジット:Focus Features
シアトルではシネコンなどで上映中。