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プロも通う! ケントの最先端野球トレーニングラボ ドライブライン・ベースボール

大谷翔平選手の華々しい活躍に加え、イチロー氏が日本人初のアメリカ野球殿堂入りを果たすなど、野球熱がますます高まる昨今。日本人プロ野球選手やメジャーリーガーから絶大な信頼を集める注目の野球トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」に潜入してきました!

壁には選手の名前入りユニフォームが飾られている。左端には大谷選手のものも

トレーニングマシンが両側にずらりと並ぶ

ドライブライン・ベースボールはアリゾナ州、フロリダ州、そしてワシントン州にある世界最高峰のスポーツ科学ラボを備えた野球トレーニング施設。その中で最も歴史があり、広大な敷地を有するのが、ケントの施設だ。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手や元シアトル・マリナーズで現ロサンゼルス・エンゼルスの菊池雄星選手、ニューヨーク・メッツの千賀滉大選手といった日本人メジャーリーガーたちも活用してきた。

アイピッチ・スマート・ピッチング・マシーンを使用して投球を再現。
打撃分析はモーションキャプチャやトレーナーによって行われる

最大の特徴は、科学的なアプローチによる徹底したパフォーマンス分析。施設内にはデータ測定機器や動作解析システムが多数設置され、トレーニング施設というより研究所と呼んでも過言ではない。

ひと昔前までは、感覚や経験則に頼る指導が主流だったが、近年ではデータや理論に基づくトレーニングが当たり前に。こうした科学的なアプローチを可能にしたことが、多くのプロ野球選手がこの施設を利用する理由の一つだろう。実際、ここでトレーニングを行った選手の多くが、のちに大きな飛躍を遂げていることにも注目したい。動作解析システムなどを活用し自身の動きを分析・数値化することでトレーナーらとともに改善点や強化すべきポイントを明確にし、パフォーマンスの向上へとつなげているのだ。

投球を分析するインテンディッド・ゾーン・トラッカー。フォーム解析が可能

スタッフを紹介

本施設で唯一の日本人スタッフの榎本詩生しおさんと、これまでに多くの日本人選手を指導したサム・ヘリンガーさんに日本人選手の話や今後のサービス展開を聞きました。


榎本 詩生さん(左)
日本にいたころはインターナショナルスクールに通い、中学生の時に渡米。野球経験があり、マーケティング業務のほか、通訳も務める。9月からはアリゾナ州の施設へ異動予定。

サム・ヘリンガーさん(右)
生まれも育ちもシアトル。主に投手指導を専門とするトレーナーで、日本人を含め数多くの選手を指導した経験を持つ。最も影響を受けた選手はイチローさんと語る。

へリンガーさんに深掘りインタビュー

▶︎ロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平選手は、2020年のオフシーズンにこの施設を利用し、翌年には投打ともに大きな飛躍を遂げました。具体的にどのようなトレーニングを行いましたか?

私の専門は主にピッチング指導なので、その観点から当時の彼とは2つのことを重点的に行いました。1つ目はいかに健康でいられるか(けがをしない体づくり)。2つ目は効率的なストライクの取り方です。トレーニングに活用したのはバイオメカニクスによる分析。つまり、前シーズンの投球を振り返り、フォームの動作解析を通じて、改善と向上に努めました。

多くの日本人選手を指導してきたかと思います。強く印象に残っている選手はいますか?

実際に関わったことはありませんが、私はシアトルで育ったので、やはりイチローさんです(笑)。彼は「私の人生」といってもいい存在です。もし彼がここを訪れることがあれば、ぜひスイング軌道を分析したいですね。もちろん、先ほど話した大谷選手も才能あふれる選手だと思います。最近指導した中では、千葉ロッテマリーンズの田中晴也選手はドライブラインのトレーニングに対してオープンで、球質・パフォーマンスが非常に優れていたことがかなり印象的でした。

▶︎ドライブライン・ベースボールのような最新テクノロジーを用いた、データに基づく指導法は日本でも主流になりつつあります。一方で、それらのデータをどう選手に落とし込むかが鍵になっているかと思います。ニューヨーク・メッツの千賀滉大選手は「NPB(日本野球機構)は最新の動作解析機器を導入しているが、それを選手に落とし込めるスタッフがいない」と述べていました。この点についてどう思いますか?

スタッフと選手のあいだでそのようなギャップを感じることは我々にもあります。データの内容を正確に伝えるには多くの時間を要します。日本人選手と関わる際には言語の壁もあります。しかし、近年は日本人選手もアメリカの最新トレーニングに理解を示してくれているので、コミュニケーションが取りやすくなっています。最も重要なことは多くの時間を費やすこと。そしてスタッフとして最も重要な役割はデータを可能な限りシンプルに伝えることだと考えています。

▶︎シアトル・マリナーズで活躍し、殿堂入りも果たしたイチローさんは母校である愛知工業大学名電高校で現役高校生を指導した際「感性を大切にすること」を強調していました。同校にはプロ顔負けの最新機器やデータを使った指導環境が整っていましたが、イチローさんは「気持ちやメンタルといった目に見えない部分が忘れられている」とも述べていました。この点についてはどのように思いますか?

究極を言えば、感性とデータの両方をバランス良く保つことが一番大切だと考えています。もちろん、感性そのものが選手を次のレベルへ進めることは言うまでもありませんし、データにも同じくらいの価値があります。イチローさんの指摘は100パーセント正しいです。パフォーマンス向上のためには感性も大切であり、データがその裏付けとして機能するのが理想の形です。データがすべてではなく、パフォーマンスを支える一つの要素に。つまり、両方をうまくミックスすることがベストだと考えています。

▶︎2025年からは日本市場に本格的に進出すると聞いています。具体的にはどのようなサー ビスを提供する予定でしょうか?

最終的な目標はアメリカと同レベルの施設を日本にもつくることです。その前段階としてトレーニングプログラムやバイオメカニクスに関する知識の提供を進めていきます。これまではNPB向けの研修などを行ってきましたが、昨年の12月にはアマチュア向けのコーチング研修と中高生向けの野球レッスンも初めて開催し、大変好評でした。

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