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地元の小学校校長が命をつないだ、日本の伝統人形 「TADAIMA:I’m Home」展〜イベントクローズアップ

地元の小学校校長が命をつないだ、日本の伝統人形 「TADAIMA:I’m Home」展
1942年、大統領令により西海岸の日系人12万人以上に強制収容が命じられました。持ち出し可能な荷物は一人につきスーツケース1つのみ、出発までわずか数日。行き場を失ったひな人形や五月人形を救ったのは、日系人の理解者であったベイリー・ガッツァート小学校のエイダ・マホン校長(当時)でした。戦後も引き取り手がないまま同校で保管されていた53体の人形は、現在シアトル歴史産業博物館(MOHAI)に収蔵され、7月12日(日)まで展示されています

取材・文: 加藤良子

施設の一連の展示を通し、地元の歴史と日系移民の歩みにより深い理解と共感をもたらしてくれる

現代のひな人形は、つけまつげを施したファッション性の高いものや同性同士のひな人形が登場するなど、デザインやかたちも多様化している。一方、MOHAIで展示されている戦前の人形は、現代の主流である幼い印象の丸顔とは異なり、顎が小さく面長で大人びた顔立ちだ。ツヤのある肌からは、当時の職人技術が生み出す特有の質感を感じさせられる。

展示コーナーには桃太郎や、真田信繁、加藤清正とおぼしき武者人形が並ぶ。戦後80年近い歳月のなかで説明が誤って伝わったケースもあるという。しかし、色あせぬ絵の具の鮮やかさは、子の健やかな成長を願った日系移民たちの思いそのもののよう。帰る家のなかった人形たちの物語に「ただいま」と銘打たれた展示名も相まって、胸に迫るものがある。人形の背後に飾られた、日系人強制収容の記憶と現代に続く家族の絆を描いたアート作品も見事だ。

館内ではシアトルの街の成り立ちや、禁酒法時代、大恐慌時代の様子が紹介されている。軍事国家として次第に力を増す日本の脅威がアメリカの目にどう映っていたか、その重苦しい空気感は生々しい。人種に関わらず児童に平等に接しながら、愛国教育も大切にしたマホン校長の協力により今ここに人形があるという細く奇跡的なつながりには、造形美以上に言葉では尽くせない価値があるのではないだろうか。

滞在時間は1時間半弱。社会不安の絶えない今だからこそ、激動の時代を越え、たたずむ人形たちの沈黙に耳を傾ける時間は、現代を捉え直すための新たな視座を与えてくれるはず。

TADAIMA: 「I’m Home」
日程:開催中~7月12日(日) ※好評につき延長
開館時間:10am~5pm
場所:860 Terry Ave. N., Seattle, WA 98109_
問い合わせ:☎️206-324-1126、information@mohai.org
料金:一般$25、65歳以上$20、学生$19、14歳以下無料
チケット・詳細:https://mohai.org/exhibits/tadaima-im-home