子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
子どもの睡眠とメンタルへの影響
〜15分多く眠るだけで脳に良い変化が〜
「うちの子、落ち着きがない」「集中できない」「すぐ怒る」といった不安を抱えている保護者は少なくありません。しかし、実は慢性的な睡眠不足がその背景に隠れている可能性もあります。睡眠は子どもの心と脳を整える大切なメンテナンス時間。睡眠不足が続くと、抑うつリスクの増加やイライラ、衝動性の高まり、学業成績の低下、さらには肥満との関連が指摘されています。アメリカの大規模追跡研究Adolescent Brain Cognitive Development(ABCD)Studyで、11歳から12歳の子どもを睡眠パターンから複数グループに分けて分析したところ、早く寝て長く眠るグループは脳の体積が大きく、認知テストの成績が高い傾向がみられました。さらに、情緒面でも落ち着いていたという結果が報告されており、睡眠と行動特性との関連が示唆されています。
子どもの必要な睡眠時間は年齢によって異なります。米国睡眠医学会(AASM)と全米睡眠財団(NSF)の推奨によると、目安は次の通りです。
•乳児(4~12カ月):12~16時間(昼寝含む)
•1~2歳:11~14時間
•3~5歳:10~13時間
•小学生:9~12時間
•思春期:8~10時間
この範囲を大きく下回る状態が続くと、心身への影響が出やすくなります。特に思春期は体内時計が遅れやすく、十分な睡眠が得られているかを確認することはとても重要です。
子どもで特に注意したい睡眠の病気には、次のようなものがあります。
• 夜驚症 (幼児期):睡眠中に突然叫んだり泣いたりするが、本人は覚えていない。多くは成長とともに改善する。
• 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が浅くなったり止まったりする状態。強いいびきや口呼吸を伴い、日中の多動や集中困難の原因になることも。
• 睡眠不足症候群:慢性的な睡眠不足が続き、日中に強い眠気や集中力低下が起こる状態。生活リズムの見直しで改善することが多い。
• 睡眠相後退症候群:体内時計が後ろにずれ、夜遅くまで眠れず朝起きられなくなる状態。思春期に多く、生活と体内リズムのズレが問題になる。
発達特性のある子どもは、入眠困難や中途覚醒などの睡眠の問題が多いと報告されています。通常発達の子どもでは睡眠の問題が約25%みられるのに対し、注意欠如・多動症(ADHD)の子どもでは約64%、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもでは約65%とはるかに高い割合を示しています。さらに、「クロノタイプ」といわれる人それぞれの体内時計の傾向(朝型・夜型など)が生まれつき「夜型」の人が一定数存在することもわかっています。思春期には体内時計が後ろにずれやすく、一時的に夜型傾向になることが多く、10代で数10%前後が夜型になるという報告もあります。また、ADHDに関する研究では約19%が夜型のクロノタイプと報告されています。
このように、生まれつき睡眠の困難を抱えやすい子どもの寝かしつけは本当に大変です。しかし、研究によると、わずか15分多く眠るだけでも、脳の働きに大きな改善がみられることがわかっています。諦めずに、質の高い睡眠を得られるよう、次のような生活習慣を少しずつ整えていきましょう。
1️⃣ 起床時刻を固定する
体内時計は朝の光でリセットされ、それから約14時間から16時間後に眠くなります。週末も大きくずらさないことが大切です。
2️⃣ 就寝前1時間は刺激を減らす
蛍光灯の強い光やスマホのブルーライトは睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑えるとされています。夜は暖色系の照明にし、動画やゲームは控えましょう。
3️⃣ 毎晩同じ入眠ルーティンをつくる
入浴、読書、消灯など一定の流れを繰り返すことで脳が自然と眠りモードに入ります。
4️⃣ 日中しっかり体を動かす
適度な運動は深い睡眠を促します。
子どもの時期に身に付けた良質な睡眠習慣は、生涯にわたる脳の健康の土台づくりにつながります。成人を対象とした研究でも、良質な睡眠は免疫機能の維持や成長ホルモンの分泌と関連し、アミロイドβなどの脳内の老廃物の排出を促し、アルツハイマーのリスクを軽減すると報告されています。だからこそ、良質な睡眠習慣は将来への大切な贈り物です。完璧を目指さなくても、昨日より15分早く眠れたら、それだけでも大きな一歩です。子どもの変化を信じ、焦らず、少しずつ安眠習慣を積み重ねていきましょう。
参考文献
▪️Extra sleep boosts teen brain power, study finds
https://www.thebrighterside.news/post/extra-sleep-boosts-teen-brain-power-study-finds/
▪️Sleep, chronotype, and sleep hygiene in children with attention-deficit/hyperactivity disorder, autism spectrum disorder, and controls
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5799342/?utm_source=chatgpt.com
















