紀伊國屋書店シアトル店の店長、永井泰伸さんが江戸の世界を知ることができる書籍を厳選!
一日江戸人
杉浦日向子 (新潮文庫)
江戸に暮らす人々は、どのように生活していたのか? 当時の衣食住や流行などを、テーマごとにイラスト付きで紹介している。
著者が漫画家だけあり、半分コミックエッセイになっています。今で言うフリーターのような人は江戸時代にもいたようです。想像よりもゆるく暮らしていた部分もあったのかな、と当時の様子を知ることができます。
家康、江戸を建てる
門井慶喜 (祥伝社文庫)
低湿地の広大な江戸の地にポテンシャルを感じた家康は、日本史上に残る大規模なインフラ整備を行った。小判の鋳造、水の供給、江戸城天守などの5話で構成される短編集。
江戸を切り拓く男たちの熱いドラマ
仕事のやりがいとは何か、と考えさせられます。今でこそ利根川は千葉県銚子市から太平洋につながっていますが、当時は江戸へ流れていました。江戸の発展のため、向きを変えさせたのです。スケールの大きい仕事を与えられた家臣たちによる男のドラマは、勉強になります。
しゃばけ
畠中 恵 (新潮文庫)
主人公の一太郎は、外出がままならないほど虚弱体質だが、妖怪が見える特別な力を持っていた。仲間の妖怪達と力を合わせ、身の周りで起きる事件の解決に乗り出す。
主人公の面倒を見る妖怪たちに萌えまくり!
主人公の一太郎と妖怪との関係性に「萌える」と、女性に評判の短編集です。主人公は少し、なよっとしているのに対し、粗暴なタイプの妖怪や男前の妖怪がいます。登場するキャラクターもかわいらしく、ライト文芸のようなタッチで、イラストも入っています。
こども武士道
齋藤 孝 監修 (日本図書センター)
新渡戸稲造による『武士道』を、現代の子どもたちにも理解しやすいように平易な言葉でかみ砕きながら解説する。思いやりの心を持ち、強く生きるための心がけとは何かを教えてくれる。
武士の知恵を現代の子どもたちに受け継ぐ
『武士道』の原文は古文調で書かれていて、大人も読むのはハードルが高いかもしれません。しかし本書は子どもでも理解でき、内容も受け入れやすいものになっています。時代を超えて届くメッセージは、今も生かせることばかりです。
江戸時代の地方が舞台となる作品も読んでみよう!
蝉しぐれ 上・下
藤沢周平 (文春文庫)
15歳の文四郎は、剣術の腕を磨き、師から秘伝を授かるまでになる。力強く生きる少年藩士を描いた成長譚。
友情や恋心に支えられながら成長する男の物語
家族の絆や恋愛、男の生き様についてなどさまざまな側面が描かれ、エンターテインメント要素が詰まった最高傑作。大人になった文四郎が、幼なじみのふくと再会し、刺客から彼女を守る場面は見もの。
武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新
磯田道史 (新潮新書)
加賀藩の下級武士が残した記録から、当時の家計を読み解く。神田の古本屋で偶然発見された古文書から武士の暮らしが生き生きとよみがえる。
下級武士の驚きの懐事情が明らかに
格式高い武家の暮らしの裏側は、その立場ゆえの交際費も多く、意外と借金だらけ。加賀藩の猪山家では家財道具を売り、妻の実家から借金をしながら家計を立て直します。武士の時代の終えんが読み取れる作品。
永井泰伸■読書好きになったきっかけは『海辺のカフカ』。同じ村上春樹作品ではギリシャ正教の聖地を旅したエッセイ『雨天炎天』がおすすめ。大学では日本文学を専攻し、中国文学なども勉強した。紀伊國屋書店入社後、東京の新宿南口店や千葉、佐賀での勤務を経てシアトルへ。現在も年間100冊の本を読む。
紀伊國屋書店 シアトル店
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