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アメリカ国内所有ホテル第1号 アパグループの挑戦、シアトルから始まる〜特別レポート

アメリカ国内所有ホテル第1号
アパグループの挑戦、
シアトルから始まる

取材・文:フォーリー由香



2016年から北米でのホテル展開を加速させているアパグループ。アメリカ初の直営ホテル「コースト・シアトル・ダウンタウン・ホテル・バイ・アパ」の開業を記念し、10月28日、同ホテルにてテープカットセレモニーが行われました。式直前に、アパグループ代表取締役社長兼CEOの元谷一志氏に海外でのホテル展開について語ってもらいました。
創業から半世紀以上、連続黒字を達成中のアパグループは海外進出を積極的に拡大している。現在、北米では46ホテルを展開しており、カナダに6つの直営ホテルを持つ。今年6月にはアメリカ初の直営ホテル「コースト・シアトル・ダウンタウン・ホテル・バイ・アパ」をオープンした。
左からコーストホテルUSA代表取締役社長佐々木迅氏、シアトル市戦略イニシアチブ担当ディレクターのサム・チョー氏、在シアトル総領事伊従 誠氏、ターニャ・ウー市議会議員、アパグループ代表取締役社長兼CEO元谷一志氏、サラ・ネルソン市議会議員、観光局『ビジット・シアトル』CCO兼SVPマイケル・ウッディ氏、コーストホテル代表取締役社長町浦孝和たかまさ
和やかな雰囲気の中、スピーチが行われた
シアトルの地を選んだ理由
「シアトルを選んだ理由は、距離230キロメートルとカナダのバンクーバーに非常に近く、車でも約2時間半で行き来でき、連携が取りやすいからです。良い物件との巡り合わせもありました」と元谷氏は語る。アパグループがカナダに展開するホテルは主にブリティッシュコロンビア州にあり、シアトルは地理的な近さが大きな利点だ。3時間の時差が発生するアメリカ東部に比べ、調整が容易なシアトルは戦略的な選択だった。「コーストホテルの名の通り、これからはサンフランシスコやロサンゼルス、サンディエゴといった日本からアクセスしやすい西海岸沿いの大都市圏に、直営・フランチャイズ問わず拡大していきたいです」と今後の展開を述べた。アパグループ内で海外シェアは現時点で2パーセントほどだが、これを段階的に10パーセントまで伸長させたいと明確な目標を持つ。西海岸だけでなく、ネバダ州やアリゾナ州、テキサス州へのシェア拡大も視野に入れているとのことだ。
多角的な視点で「日本式」を取り入れる
日本のアパホテルと同じサービスをすべて海外で採用するのは難しいが、可能な限り「日本式」を取り入れ、効率性を追及していきたいと元谷氏は話す。たとえば、ホースシャワーの導入だ。北米では固定シャワーが主流だが、清掃の効率性という面から見るとホースシャワーの方が優れている。このような利便性は、実際に清掃作業に関わる清掃員の視点でなければ気づきにくいポイントである。また、日本のアパホテルで採用している「おやすみスイッチ(部屋の照明を一括で消す機能)」も将来的に導入し、利便化を図りたいと語る。「日本では細部に至るまでこだわったサービスを提供していてそこまで必要かと思われることも少なくありません。こうした細やかなサービスは、気づくか気づかないかのレベルなのですが、気づいたときに感銘を受ける。その小さな積み重ねが大事だと思っています」世界的に見ても評価が高い日本のサービスを、北米市場でも活かしたいという考えだ。
新しい挑戦と未来へのビジョンを熱く語る元谷氏
「イーブンベター」なホテルづくり
2022年に現職に就任して以来、さまざまな改革を行ってきた元谷氏は、海外においても「1ホテル1イノベーション」を掲げ、イーブンベターで、更なる高みを目指す。リピーターを飽きさせないように、進化を続けることで常に新しい魅力を提供したいと考えている。「『現状維持は衰退』だと思っています。世の中の急激な変化に目を塞いでいるといつの間にか時代遅れになります。都度、最新のテクノロジーを融合させ進化していかないと飽きられてしまうため、トライ・アンド・エラーは常に実行すべきです」と強調した。リピーターの定着には安定した設備とサービスが不可欠だが、継続して利用してもらうにはインパクトを与え続ることが重要とのこと。「同じサービスでは最初の感動は深いが、その感動は次第に薄れていきます。経済学でいう『限界効用理論』の概念を適用し、少しずつ改善・改良を重ねながら新たな発見を提供できるサービスを届けていきたいと思っています」と抱負を語った。
本誌記者とともに
シアトルからアメリカ市場へ
着実な成長を遂げるアパグループが次に挑むのは、アメリカ市場におけるブランディングの強化だ。「アメリカ市場でブランドを確立することは、グローバルな展開において非常に大きな意味を持つと考えています。これまで日本とカナダに展開してきましたが、今後はアメリカ市場にも深く根付かせていきたいです。コーストホテルが、愛されるホテルブランドとして成長し、働きたいと思う人が増えてほしいとも願っています。そして、日本企業として日米の架け橋となっていきたいです」と思いを述べた。アパホテル株式会社は、JFA(日本サッカー連盟)やAFC(アジアサッカー連盟)のスポンサーだ。シアトルで開催される2026年のFIFAワールドカップに向けても顧客獲得が期待される。
日本で「アパホテル」と言えば、その名を知らない人はいない。アメリカでも同じように親しまれる存在になる日は遠くないかもしれない。人口減少の一途をたどる日本とは対照的に、移民を受け入れ成長を続けるアメリカ。シアトルの第1号ホテルを皮切りに、この地で新たな歴史を築こうとしている。
コースト・シアトル・ダウンタウン・ホテル・バイ・アパの特徴

コースト・トゥー・ダブルルーム

ホテルのコンセプトは「モダン&エフィシエント(現代的かつ効率的)」。リンク・ライト・レールのシンフォニー駅(旧ユニバーシティー・ストリート駅)から徒歩4分という好立地にあり、コンベンション・センターへは地下通路を利用すると徒歩わずか5分でアクセス可能だ。シャワーホース、温水洗浄便座、大型テレビを2025年内に全客室に導入予定。全室羽毛布団を採用し、無料の朝食付き。ペットフレンドリーの客室も備える。

Coast Seattle Downtown Hotel by APA

1301 6th Ave, Seattle, WA 98101
料金:一泊大人一名/$162〜
問い合わせ:☎︎
206-624-0500、coastseattleinfo@coasthotels.com
詳細:www.coasthotels.com/coast-seattle-downtown-hotel-by-apa

河野 光
2018年からシアトル在住。運動オンチのインドア派に思われがちだが、屋内にこもっているのが大の苦手。犬とお酒と音楽が友だち。愛犬との散歩で、東京では見られない野鳥に話しかけるのが日課。