がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。
新団体として
在米日本人の健康を支えて 1年
「アメリカ在住の日本人に必要不可欠なサポート活動を」と立ち上げた新団体、「FLAT・ふらっと」がニューヨーク州から非営利団体の認可を得て、はや1年が経ちました。創立メンバーである6人の理事と、多くのボランティアの皆さんの協力により、現在は9種類のプログラムをオンラインで定期開催しています。
5月のニューヨークでのキックオフ・イベントを皮切りに、サポート・グループを中心としたさまざまな活動も定着。この半年で300人ほどの方を支援できました。また、この1年間に医療関連のウェビナーを計8回実施し、約800人の参加がありました。YouTubeチャンネルも開設し、より便利な方法で必要な情報と知識を届けられるようになっています。
当団体の活動は、ボランティアの皆さんの協力なしでは何ひとつ成り立たないと言っても過言ではありません。ボランティアの皆さんの多くは、自身の病気の治療、仕事と両立させながら、その経験を生かしてサポート活動を行いたいという方々、そして専門知識やスキルを惜しみなく提供したいという方々です。自ら病気の経験を持つボランティア・スタッフが、ファシリテーター・トレーニングを経て開催するミーティングには、田原梨絵医師(乳がん患者サポートミーティング)、鈴木幸雄医師・村上幸祐医師(婦人科がん患者サポートミーティング)、山田悠史医師(シニア・カフェ)もアドバイザーとして参加しています。
新団体への移行を機に、その他のがんの患者さんや、スペシャルニーズの療育を行う家族、情報を必要としている介護者さん、緩和ケアを求める方々のためのプログラムも始動。それぞれ専門性の高い医師や関係者を招き、皆さんの助けとなれるよう、取り組みを重ねています。参加者だけでは解決できない問題などを、医師に直接、セカンド・オピニオンにならない範囲で尋ねることができ、充実したミーティングを提供できていると自負しております。一般の方の参加が多いウェビナーも、米国の病院などで臨床や研究に従事する医師や、専門性の高い分野を極めている優れた方から、日米の違いなども含め日本語でわかりやすく解説を聞けると好評です。
病院などで日本語での医療通訳を手配できるようにはなっているものの、アメリカの医療情報にアクセスすることは、英語を得意としない方々にはまだまだハードルが高いと、日々の活動を通して実感します。米国の医療や保険については、これまでもウェビナーや勉強会を企画してきましたが、今後はウェブサイトやニュースレターからも情報を届けられるようにできればと考えています。治療にまつわる経済的負担を少しでも軽減するため、アメリカで受けられるサービスについての情報も発信していく予定です。家族から離れて米国に暮らす患者さんの付き添いや電話でのサポート、さらに2024年から自己免疫疾患を持つ方への支援と、すでに動き始めている活動に加え、健康と運動のほか、メンタル・ヘルスもカバーできるよう、活動の幅を広げていくことも視野に入れています。
当団体は、アメリカで生活をするうえで欠かせない医療情報とサポートを日本語で提供することで、言語や文化の違いが皆さんのアメリカ生活の質に影響を与えないようにするために活動しています。何より、皆さんがアメリカで重い病気にかかったり、けがをして治療が必要になったりしたときに支えていくことが私たちの使命と心得ています。仕事を辞めることを考え、高額な医療費を心配し、アメリカでの生活を断念することがないよう、また持病のある方が渡米する際の不安を少しでも和げられるよう、尽力していく所存です。
皆さんに、本コラムを通してアメリカにおける日本人コミュニティーの草の根活動を知っていただければ幸いです。これからのFLAT・ふらっとを見守ってください。
ブロディー愛子■「FLAT・ふらっと」代表。患者アドボケート。乳がんサバイバー。2013年に日本人の乳がん患者のためのサポート団体、Japanese SHAREを設立。ライフコーチ、アーキタイパルコンサルタントとしても活動。