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子どもと大人に必要なワクチンとその重要性〜私たちの命を守るヘルスケア

がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。

子どもと大人に必要なワクチンと
その重要性


感染症とワクチン

ワクチンは、感染症を予防し個人の健康を守るだけでなく集団免疫をも高め、社会全体の健康を維持する重要な役割を果たします。ここでは、子どもと大人に必要なワクチンとその意義について解説します。

ワクチンで予防可能な病気

私たちの生活にはさまざまな病気の脅威が常に潜んでいます。中でも伝染性の高い感染症は、一度流行すると社会全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、免疫が未発達な子どもや高齢者、持病を持つ人々は重症化しやすい傾向があるため、予防が非常に重要です。ワクチンは、病原体に対する免疫を事前に獲得させることで、発病や重症化を予防します。麻しんや風しんなど、ワクチンを接種することで罹患りかんを防げる感染症(Vaccine preventable diseases/(VPDs)は多く存在します。定期的なワクチン接種は、個人のみならず集団全体で免疫を強化し、感染症の流行を抑える「集団免疫」の形成にもつながります。

子どものワクチン

子どもの場合、出生直後からさまざまなワクチン接種が推奨されています。定期接種のスケジュールは各国や地域ごとに詳細に策定されており、子どもが確実に免疫を得られるよう計画されています。代表的なワクチンには、ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ、ヒトインフルエンザ菌感染症(Hib感染症)、肺炎球菌、麻しん、風しん、おたふくかぜ(ムンプスウイルス)、水痘(みずぼうそう)、ロタウイルス、日本脳炎、B型肝炎などがあります。また、子宮頸がんや中咽頭がんの予防に有効なヒトパピローマウイルス感染症(HPV感染症)ワクチンも、近年、その重要性が再認識されています。

こうした定期接種は、学校生活や集団行動において非常に効果的で、感染症による長期欠席や後遺症のリスクを低減します。また、子どもが免疫をしっかりと獲得することで、周囲の大人や高齢者、免疫力の低下している人々を間接的に感染から守る効果も期待できます。つまり、乳幼児期のワクチンは、個人の健康を守るだけでなく、地域社会全体の健康を支える基盤ともいえます。

大人のワクチン

大人にとってもワクチン接種は重要です。インフルエンザワクチンは毎年の流行株に合わせて更新され、接種することで重症化を防ぎ、長期欠勤を回避できます。また、破傷風やジフテリア、百日咳などは成人期に再接種が必要な場合があります。特に破傷風は怪我をした際に免疫が不十分だと重篤な症状を引き起こす可能性があります。さらに、一定年齢以上の成人に肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチンが推奨されています。これらは高齢化社会において、長寿と健康的な生活を支える重要な要素です。

また、近年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行は、ワクチン接種の重要性を改めて認識させる契機となりました。COVID-19ワクチンは追加接種や変異株対応ワクチンが用意され、重症化や感染拡大を防ぐ重要な手段として広く活用されています。加えて、最近では新生児や乳児・高齢者が肺炎などを発症するリスクを軽減することが期待されるRSウイルスワクチンも開発されました。このワクチンは一定数週以上の妊婦や高齢者への接種が推奨され始めています。こうした新たなワクチンの登場も、感染症から身を守るための手段として注目されています。

SNSの普及と誤情報

ワクチン接種は、信頼できる情報源から正確な知識を得て、適切なタイミングで受けることが重要です。インターネットやSNSの普及により、ワクチンに関する情報があふれていますが、中には科学的根拠が乏しい情報も混在しています。そのため、公的機関が提供する信頼性の高い情報を参考にし、自身や家族に合った接種計画を立てることが肝要です。ワクチンは病気や感染症の予防策としてだけでなく、罹患後の重症化や合併症を防ぐ点でも非常に効果的で、費用対効果の高い予防策といえます。

総じて、ワクチン接種は子どもから大人まで、日常生活を安心で豊かなものにするために不可欠な感染症予防手段です。乳幼児期の定期接種は、学校生活や社会活動における健康基盤を築き、成人期のキャッチアップ接種や追加接種は、健康寿命を延ばし、社会全体の医療負担軽減にもつながります。私たちひとりひとりが正しい情報を収集し、計画的にワクチンを接種することで、感染症による混乱や不安を減らし、より安全で豊かな生活を実現させていきましょう。

■ワクチン接種時期の詳細を参照できるサイト
CDCのホームページ www.cdc.gov/vaccines/index.html
■日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール
www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=138
大橋祐介医師
新潟大学卒業。手稲渓仁会病院で初期研修修了後、横須賀米国海軍病院、飯塚病院感染症科、聖路加国際病院感染症科を経て、2024年7月よりUniversity of Texas Science at Houstonで臨床感染症フェローとして勤務中。

 

FLAT・ふらっと
2013年から続く乳がん・婦人科がん患者サポート団体のJapanese SHAREが、2023年4月1日より、ニューヨークを拠点とした非営利団体、FLAT・ふらっとに活動の場を移行。乳がん・婦人科がんのほか全てのがん患者、高齢者、スペシャルニーズのある子どもの保護者を対象とし、在米日本人コミュニティーを健康と医療の面から支える。