がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。
「FLAT・ふらっと」の
1年の活動を振り返って
「FLAT・ふらっと」は、「在米日本人の健康や医療を支えたい」という思いで集った在米日本人ボランティアや医療者らで活動している非営利団体です。活動2年目を迎えた2024年、私たちは「団体の存在や活動を知ってもらうこと」を重視しつつ、さまざまな取り組みを行ってきました。
全米からオンラインで集う定期ミーティング
活動の柱である、がんや自己免疫疾患経験者向けのオンライン・サポートミーティングは、ボランティア・ファシリテーターの協力を得て毎月開催されています。デリケートな話題がでる際もファシリテーターは中立を保ち、全米から集う参加者が「話ができてよかった」と感じられるよう心掛けています。アドバイザーとしてミーティングに参加している専門性の高い日本人医師とも意見交換ができる点は、定期ミーティングの大きな特徴です。参加者からは「日本語で医療者と話すことができる安心感は大きい」との声を多くいただいています。また、日本語でお喋りを楽しめるシニア向けの活動も好評です。憩いの場としてだけでなく、老年科医師への質問時間を設け、孤立から起こりやすい健康問題について学ぶ場としても充実した会を提供しています。
これからも英語社会で仕事や子育てをしながら治療を受ける人々やシニアが抱く心の荷物をひととき下ろすことのできる場として、オンラインではありますが、「互いに顔を合わせてつながる場」を提供していきたいと考えています。
医療改善に向けて声をあげる
患者アドボケートとしての活動も、国内外で積極的に行っています。まず2024年2月には名古屋で開催された日本臨床腫瘍学会学術集会の市民講座で講演を行い、10月には日本でのアメリカ企業主催のイベントで、他国で使用可能な薬が日本では手に入らない「ドラッグラグ」をなくすための討論会に参加しました。また、7月には国際婦人科癌学会(IGCS)に加盟し、 8月には世界大腸がん協会(GCCA)にも加盟。そのコラボレーション企画として日本語の大腸がん啓発のパンフレットを制作しました。
さらに、地域市民の臨床試験への理解を深めるべくニューヨークのコロンビア大学、アルベルト・アインシュタイン大学、マウントサイナイ医科大学の3つの大学病院とニューヨーク市立大学が共同で取り組む「DISRUPT」プロジェクトにも、唯一のアジア人団体として参加しています。がん研究や治療における人種、性別、地域による格差を減らすため、日本語でのウェブページやパンフレットを作成し、来年のイベントなども計画しています。また、在米日本人が健康に暮らしていく上で役立つ健康・医療情報についても専門家の協力を得て在米日本語メディアやSNSで発信しています。
つながり、支え合い、さらなる飛躍を
「FLAT・ふらっと」のサポート利用者には、在米の日系企業に勤める従業員やその家族も多く、生活に慣れるだけでも大変な中で、日本とは医療制度がまったく異なるアメリカで病気の診断を受けて強い不安を抱える方も少なくありません。渡米して間もない方も、長年住んでいる方も、安心して暮らせる日本人コミュニティを作るためには、在米日本人がつながり情報交換をし、支え合っていく必要があります。
7月にシアトルのベルビューで開催した活動紹介イベントでは、シアトル在住の多くの方々から賛同していただきました。また、アメリカの団体に交じって、在米日本人特有の事情について声をあげたことで、私たちの取り組みに協力したいと考える団体や企業との話し合いが始まろうとしています。来年は、今年蒔いた種を育てる活動を続け、パートナーやスポンサー企業を見つけ、実を結ぶ日が来ることを期待しています。
アメリカで暮らし、さまざまな苦労を経験してきた日本人ボランティアと医療者が集う「FLAT・ふらっと」は、日本人コミュニティの環境や文化的背景を理解しています。在米日本人の生活向上のために、来年も引き続き、皆さまの温かいご支援とボランティア協力をお願い申し上げます。
■患者アドボケート。2001年に乳がんを経験。
2013年より乳がん患者への支援活動を開始し、これまでに11,000人以上の在米日系人をサポートしている。ICF認定ライフコーチ、アーキタイパル・コンサルタントとしても活躍中。
alliswellcoaching.com
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