シアトル駐在日誌
アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。
取材・文:磯野愛
#16 斉藤 淳
静岡県出身。2007年、日本飛行機株式会社入社。2015年よりシアトル事務所に所長として赴任。忙しい仕事の合間には人とはちょっと変わった趣向の旅行を家族で楽しんでいる。
親の熱心な後押しで、高校からオーストラリアに留学しました。飛行機が大好きだったので、高校時代に自家用操縦士資格を、その後進学したモーゼスレイクにあるビッグ・ベンド・コミュニティー・カレッジでは航空機整備士資格を取得しました。
大学への編入のため日本に戻った後、川崎重工業グループ傘下の日本飛行機に就 職。日本飛行機は航空宇宙機器の製造や機体整備を行う会社で、ボーイング社向けの航空機部品は横浜本社に併設された工場で製造しています。約300〜600万点の部品から構成される「777」や「747」という大型機のうち、日本飛行機は主翼や胴体の構成品、フラップと呼ばれる補助翼、そして車輪を格納する扉などの製造と組み立てを手掛けています。
そのボーイング社からは2016年度に「サ プライヤー・オブ・ザ・イヤ ー 」、2017年度には「パフォーマンス・エクセレンス・アワード」を受賞しました。特に「サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」は毎年世界中のサプライヤー1万3,000 社の中から十数社のみ選ばれる大変名誉ある賞です。
私は入社してすぐ、海外営業部に配属となり、北米企業への営業活動と納期や契約の管理などを行っていました。2015年より、ここシアトルに赴任となり、航空機製造の最前線で顧客と自社の橋渡しをしています。顧客とのコミュニケーション、および信頼関係の構築はもちろんのこと、自社が製造した製品の状況を確認するため、組み立ての現場を直接確認する作業もしています。
ボーイング社の工場はとにかく広大な敷地面積ですから、ひと回りするだけで も2時間は必要。全作業工程を把握したうえで、現場の情報をいち早く、正しくキャッチできるように努めています。駐在員が私ひとりということもありますし、またここではセールス全般から納期、契約業務、自社製品のクオリティー管理など、多岐にわたる知識と経験が求められるので、日本にいた頃よりも正直多忙な毎日です。学生時代も含め、ここまで紆余曲折ありましたが、無駄なことはひとつもなかったと感じています。
自宅はレドモンドにあり、妻と小学5年生の息子、小学1年生の娘の4人で暮らしています。子どもたちは現地校とシアトル日本語補習学校に通っており、やはり最初は英語や友だち作りに苦労していました。妻も日々頑張ってくれていて、そんな家族を見ていると自分も負けていられないな、といつも励まされる思いです。
休日には子どもたちとエドモンズの桟橋へ釣りに行きます。ここ までの釣果はたったイカ1杯だけですけれど……(苦笑)。そこに は野生のアザラシも集まって来ます。日本だとアザラシが顔を出 せばアイドルさながらの人気ですが、こちらでは魚を狙いに来た 正真正銘の「厄介者」。この辺りの文化の違いも面白いですよね。
まとまった休みが取れた時は家族で少し変わった旅行に出かけ るのが好きです。無線機やサバイバルキットを搭載した特殊な車 で北極圏以北の村までドライブしたり、吉野家の牛丼を食べにカ リフォルニア州まで1日かけてドライブしたりもしました。先日 はネバダ州の砂漠でなんとUFO遭遇!?(後日、打ち上げられたロ ケットと判明)。
シアトルに来てから、仕事はもちろん、さまざまな活動などを通じ て、日本ではなかなか出会うことのできない方々ともたくさん知り 合うことができました。これからもこの出会いに感謝して、残りの 駐在生活を楽しんでいきたいと思います。