1月23日、ダウンタウンシアトルのピュージェット・サウンド・プラザ(Puget Sound Plaza)にて、日本人の海外留学をサポートするICC国際交流委員会主催のパネル・ディスカッション「社会問題をビジネスで解決する」が開催された。
取材・文・写真:手呂内朱梨
今回のイベントでは、ゲストスピーカーとして毎日新聞社の論説員である野沢和弘氏、障がい者の雇用機会拡大に取り組む株式会社サンクステンプ社長の中村淳氏を迎え、「障がい者とビジネス」のテーマのもと、日本における障がい者雇用の現状と今後を話し合った。
野沢氏は、特定の人に働きやすい環境を作ろうとすることで周囲にも良い影響を与える「合理的配慮」の概念を紹介。「既存の価値観に障がい者を当てはめるやり方では、本当の意味でのサポートとは言えない。各々の能力や才能を活かせる社会にする必要がある」と語った。
中村氏が代表を務める株式会社サンクステンプは、従業員の約9割がなんらかの障がいを持つ。「バリアフリーのように見た目のバリアをなくすことは簡単だが、心の中のバリアをなくすのはとても大変だ」と話し、「障がい者の採用促進に肯定的な意見が多い企業でも、その配属先を決める段階になると計画がとん挫してしまう。対して、これまでに多くの障がい者を受け入れてきた企業からは、積極的に障がい者の雇用を進めたいという声が聞かれる」と続けた。また外注業務を内政化することで障がい者の雇用を創出した実例を紹介し、障がい者が活躍できる環境作りについて語った。
今回の講演会の企画に携わった株式会社enパシフィックサービスの藤田佳予子氏は、サンフランシスコやロサンゼルス、ニューヨークでも同様の講演会を開催しており「米国で暮らす障がいを持った日本人の力になりたい」と話す。
ゲストスピーカーへの質問は講演会終了後も続き、障がい者を含むマイノリティの雇用促進に対する関心の高さがうかがえた。