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コロナ禍で発見した、現場の課題とこれから

特別支援を受ける生徒たちの「学びたい」気持ちを受け止めて

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、刻々と変化する政府や学区の感染対策に柔軟な対応を求められた教育の現場。子どもたちの学びの場を守るため、これまでにはなかった取り組みに奮闘する日々です。その経験から得たことを、特別支援教育校で働くアキ・ロシェさんが振り返ります。

アキ・ロシェ■ワシントン大学美術学科を卒業後、アリゾナ州のグランド・キャニオン大学にて特殊教育学位を取得。2011年にワシントン州に戻り、ケント学区内の小学校・高校で経験を積み、2016年からキトサップ郡ブレマートン・ハイスクールにて特別支援教育クラスのパラエデュケーター(教育補助員)として勤務する。

オンライン授業への移行で恵まれた環境に改めて感謝

特別支援教育を受ける生徒たちにとって、教室での直接的な交流は必要不可欠な刺激で、休校が決まった時はとても不安でした。

2020年3月、州の方針によりオンライン授業を始め、学区内の6〜12年生の生徒たちは支給されたクロームブック(ノートパソコン)を自宅で使うようになりました。幸い、子どもたちはコロナ以前からパソコンを使用した授業には慣れていましたが、問題は、必ずしも各家庭にインターネットへの接続があるわけではなかったこと。学校の実費でポケットWi-Fiを生徒宅に提供し、設置の手伝いをしたこともあります。

教員たちはGoogle Classroomを用いた授業の仕方など技術面での指導や、オンライン授業の進め方のトレーニングも受けました。近年のテクノロジー社会という背景がなければ成り立たなかったでしょう。ワシントン州の整った教育環境を幸運に感じています。また、ブレマートン学区では、パンデミックによる休校という不可抗力による単位不足で落第するようなことがないよう、2020年度の休校期間、コースを完了させると学校での単位取得と同等の扱いになるAPEX(www.apexlearningvs.com)というオンライン・ラーニング・プログラムも採用していました。

生徒によって反応や集中力は異なる

オンライン授業に対しての生徒の反応は、大きく2つに分かれました。

私が専門とする特別支援の子どもたちは特に、環境の変化に敏感な生徒が多くいます。周りの友人たちとのコミュニケーションを楽しみながら競い合うのを好む生徒は、クラスメートと直接会えないことで非常にストレスがたまったように見受けられました。一方で、誰にも邪魔されず授業に集中できることをプラスに感じた生徒もいたようです。

生徒はそれぞれの集中力で授業に挑んでいます。スクリーン越しでは、誰が注意散漫かなど常に感じ取るのは難しく、どうしたらみんなを勉強に集中させることができるか、いつも悪戦苦闘していました。けれども、いちばんの苦労は別にありました。

対面式授業再開も予想外の困難

実は、コロナ禍で最も厳しかった時期は、対面式授業に戻したタイミングでした。オンライン授業と違い、ソーシャル・ディスタンスやマスクの着用が求められ、また、生徒やその家族が感染した疑いがある場合は隔離などの対応に追われます。現在も終わりが見えない状況です。

ブレマートン学区は、2021年9月から対面式授業を本格再開しました。オンライン授業を1年以上続けた生徒たちは、やはりパンデミック以前の生徒と比べ、社会的順応スキルに多少の遅れが見られました。そのフラストレーションを緩和するために教え方を変えるなど、教員数が不足している中でさらなる対策を取らざるを得ず、残業も余儀なくされました。

本来であれば次の学期の準備をする長期休暇の時期も、臨時授業などに充てなければなりません。どうすれば生徒にとってもスタッフにとっても効率の良い学校生活を実現できるのか、今も試行錯誤が続いています。

パンデミックで知った、型にはまらない「学び」

思い出深いエピソードがあります。最初、オンライン授業に非協力的だった生徒がいました。わからないことは強く主張してくるのですが、授業中、カメラはずっとオフにしたまま。彼女が顔を見せて会話をしてくれることはありませんでした。パソコンよりも紙とペンを使った授業が彼女には合っていたのです。

それでも、授業には毎日参加し、勉強をしたい、遅れを取りたくないという気持ちが伝わってきました。ひとつひとつの質問に誠実に答え続けているうち、ある日突然、カメラをオンにしてくれたのです。彼女はリモートでの勉強に自信を持ち始めたのでしょう。また、私は信頼されているのだとうれしく感じました。オンラインでの交流を通して、絆が深まった瞬間でした。

今後の理想は、生徒の個性により深く寄り添うことのできるオンライン授業を、選択肢として継続していくことです。生徒とその家族、学校関係者の健康と安全を最優先しながら、パンデミックから学んだことを基に、ストレスフリーでフレキシブルな学校生活を提案したいと考えています。生徒の「学びたい」という気持ちさえあれば、教育はどこでも可能なのです。


プリスクールで、教育者として母として

シアトルにあるモンテッソーリ教育を行うプリスクールに息子を通わせ、自身もトドラー・クラス(1歳半〜3歳)のアシスタントとして勤務をするS.Y.さんに、現場の様子を伝えてもらいます。

園のオペレーションの変化は?

2020年3月、緊急事態宣言後の3カ月は園を閉めました。私が担当しているクラスは働く親御さんが多いため、対面式でクラスを再開。大きく変わったオペレーションは園児の送迎です。学校関係者のワクチン接種が義務化された現在でも、親御さんが教室の中に入ることはできず、外の入り口でのチェックイン、チェックアウトとなります。クラス人数の制限、イベントのキャンセルなども続いています。また、園庭の遊具はスケジュールを組み、使用するクラスが入れ替わるごとに消毒。口に入れたおもちゃは全て洗い、殺菌も行います。3歳以上のクラスの子には、室内でマスクを着用してもらいます。

感染対策のメリットとデメリットは?

子どもたちに手洗い・うがいの大切さを教えられたのは、大きな収穫です。風邪やインフルエンザの予防にもなり、今後も継続したいと多くの先生が賛同しています。一方、親御さんとは普段もできるだけ会話を控えているので、自分が子どもを預ける側でもあることから、親しくなれないのは寂しいな、と感じますね。担任の先生はリモートで面談も行いますが、アシスタントの私は親御さんとの関係を築くことが難しくなりました。

子どもたちや保護者の方たちからの反応は?

送迎時や消毒のための「待つ」時間が格段に増えましたが、子どもたちはよく我慢していると思います。保護者の方たちも、ガイドラインがころころ変わる中、とても協力的です。園が再開しても長期のお休みを選択する家庭がありましたが、園の先生によると、マスク着用や今までと違うルーティン、お休み中のお友だちに関して、子どもたちから「どうして?」と質問の嵐だったそうです。

自身も働くお母さんとして思うことは?

園は基本的に、CDC(米疫病対策センター)のガイドラインに沿って感染対策をしているのですが、ご存じの通り頻繁に更新されます。園児に発熱、咳、鼻水、下痢などの症状があれば、親御さんには仕事を休んで検査に連れて行ってもらうことも多々ありますし、予測はできません。

仕事に子育てに忙しいと思いますが、全てを完璧にこなそうとするのではなく、肩の力を抜いて、時には周りの人の力を借り、「コロナ禍だから」と割り切ることも大切かと思います。園側も精一杯のサポートができるよう、心がけています。


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