シアトル近郊の専門家たちが、悩み多きバイリンガル子育てについて回答。子どもと楽しむ、子育てのヒント。
コミュニケーション能力が大事とよく言われます。
家庭で伸ばす方法を教えてください。
自分の考えを相手にきちんと伝えられるように、幼児期から表現力の基礎を積み上げておきましょう。
母「お風呂見てきて」、母「どうだった?」、子ども「四角だったよ」――以前、子ども向けの笑い話を集めた本で読んだものです。話としては面白いですが、もし仕事や学校のテストでの場面なら、どうでしょうか?
表現力とは、自分の思いや考えを、相手にわかりやすく伝える力です。言語や音楽、アートなど、表現にはいくつか手段がありますが、特に言語は「日常や社会で生きる力」の要。よく言われるコミュニケーション能力の高さとは、表現力の高さにあります。表現力が足りないと、相手に誤解されてしまうこともあるからです。
近年、子どもの表現力低下が心配されています。自分の感情をうまく表現できなかったり、相手の話を聞かず自分の思いばかり伝えたりと、対人関係でトラブルになることがあるようです。円滑なコミュニケーションには、一方的に自分の考えを押し付けるのではなく、相手の気持ちや表情を読み取りながら、理解しやすく話すことが大事です。
日本では2020年の大学入試改革に向けて、「論理的思考力」や「記述力」が教育現場でも重視されるようになり、思考力、判断力、表現力をバランス良く育成することが求められています。数学の公式や英単語を暗記するといった知識を蓄える教育は、勉強の土台です。今後は、語彙や知識を使って、ひとつだけでない自分の答えを見つけ、自分の言葉で表現することがさらに必要となります。
変化の多い社会の中で未来を切り開くためにも、幼児期から表現力の基礎を積み上げておきましょう。そうすれば子どもは将来、自己表現をする場面と、人と協調する場面との区別が、柔軟に判断できるようになります。以下、家庭でできる具体的な方法を紹介します。
1.読み聞かせやしりとりで語彙を増やす
絵本の読み聞かせは、言葉を学ぶだけでなく、視野を広げ、想像力を豊かにします。しりとりも良いでしょう。慣れたら、3文字しばりにしたり、食べ物や動物などテーマを決めたりして難易度を上げてみてください。
2.自分の考えを伝える機会を持つ
1語やYES/NOで答えられない質問をして、自分の考えを相手に伝える機会を増やしてあげましょう。子どもの話をじっくり聞いて、共感してあげると良いでしょう。
3.聞く力を身に付ける
小学校では、プリントやボードに書かれた言葉や説明を見て、または先生の説明を聞き取って理解する力が必要になります。聞く力を育むには、逆さ言葉遊びのほか、読み聞かせた本の内容を説明してもらうのも効果的です。
豊かな表現力は、日々の出来事や人生を鮮やかにする宝。友だちと協力し、わかり合う喜びは、子どもたちの生きる力を育てます。最後に、私も普段から気を付けている「話し方かきくけこ」を紹介させてください。「か」顔を見て、「き」きちんとわかりやすく、「く」口をしっかり開けて、「け」敬語で、「こ」声の大きさに気を付けて話す、というものです。子育てのお役に立てれば幸いです。家族みんなで楽しんでくださいね。
教えてくれたのは
おひさま学習幼稚園
アレン聡子さん
おひさま学習幼稚園園長。小学生の頃から日本語表現の面白さや奥深さに興味を持ち、大学では日本文化学科を専攻。子どもたちがワクワク学び成長できるように、毎日のクラスや行事の準備、また日本語の楽しさを伝えるために日々奮闘中。
■Ohisama Gakushu Yochien
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