2月4日から13日までマッコー・ホールで上演されたパシフィック・ノースウエスト・バレエ(以下PNB)の人気演目「ロミオとジュリエット」。現代性を取り入れた斬新な演出が見どころです。
取材・文:本田絢乃
バレエ版「ロミオとジュリエット」はシェイクスピア原作の恋愛悲劇を基に、セルゲイ・プロコフィエフ氏が作曲し、これまでさまざまな振付師によって上演されてきた名作のひとつだ。PNBでは2008年の初演以来、ジャン=クリストフ・マイヨー氏によりアレンジされた作品を上演。ジュリエットを成熟した大人の女性として描くなど現代性を意識した演出や、ダンサーのダイナミックな動きが特徴的で、シェイクスピアの傑作を翻案した最も美しいバレエのひとつとして世界中で高い評価を得ている。
マイヨー版の振り付けで特に印象的だったのは、映画から着想されたというスローモーション、ストップモーションだ。この演出は決闘のシーンで用いられるが、剣を使わずダンサーが全身を使って戦いを表現することで、より迫力のある舞台になり目を奪われた。
有名な「バルコニー」や「寝室のパ・ド・ドゥ」も、限りなくそぎ落とされた舞台装置が逆に主人公ふたりのドラマチックな踊りを引き立てる。ちょっと子どもには刺激が強いんじゃ?というほどに官能的で、セリフはないのに痛いほど「感情」が伝わってくるのだ。幸せが長く続かなくても、これほどまでに情熱的な恋を味わえるなら、死んでもいいかもしれないと感情移入してしまう、まさにエモーショナルな舞台だった。
筆者が鑑賞した3日目のキャストには、日本人の両親を持つ日系アメリカ人、櫻木 空(さくらぎ くう)さんの名前も。主人公ロミオの友人でモンタギュー公の甥、ベンヴォ—リオをエネルギッシュに演じた。2020年に入団したばかりで現在はコールドバレエ(群舞)を担い、これからの活躍が楽しみなダンサーである。