ニューヨークのネーデルランダー・シアターで何度も興行記録を更新し、新たな金字塔を打ち立てたミュージカル「プリティ・ウーマン」が全米ツアー中! シアトルでは6月7日から12日までパラマウント・シアターでの上演となりました。
取材・文:本田絢乃
この記事が掲載される頃、すでにシアトル公演が終了してしまっていることが残念でならない。それほど、このミュージカルが素晴らしく、最高にハートフルな2時間だったことをまずは冒頭でお伝えしたい。
「プリティ・ウーマン」と言えば、映画好きでなくとも知っているほどの超名作。リチャード・ギアとジュリア・ロバーツ主演で大ヒットした、1990年公開のラブコメ映画だ。舞台はロサンゼルスのハリウッド。コール・ガールのビビアンが実業家でお金持ちのエドワードと出会い、ひょんなことから彼のアシスタントを期間限定で引き受けることに。次第にふたりは引かれ合い、結ばれるシンデレラ・ストーリー。映画で監督を務めたゲイリー・マーシャルと、同じく脚本家のJ・F・ロートンがミュージカル版の脚本も執筆したとあって、映画を忠実に再現しながらもミュージカルらしい観客との一体感を意識した演出が随所に感じられた。
主役ふたりの歌唱力はさることながら、脇役たちの個性的で愛らしいキャラクターも見どころのひとつ。特にハッピーマンを演じたカイル・テイラー・パーカーは、トニー賞を受賞した演目「キンキー・ブーツ」で主演のローラを演じた実力者である。映画では目立たない役なのだが、ミュージカルではひとりで5役を演じるオーガナイザー的役割を果たし、大いに舞台を盛り上げた。
そして忘れてはならないのが、挿入歌の「オー・プリティ・ウーマン」だ。第2幕の冒頭、キャストのひとりがギターで曲を弾き始めるのだが、ハッピーマンが、「今じゃない、ちょっと待ってろ」とそれを制する。そのまま物語は進み、カーテンコールへ。あの名曲が聴けないまま終わるのだろうかと落胆していると、突然曲がスタート。粋な演出に、キャストのみならず観客も全員が総立ちで手拍子しながら一緒に歌う、なんともハッピーなエンディングとなった。最初から最後まで目の離せない、何度でも観たいと思える珠玉の作品だった。