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30周年記念北米ツアー 和太鼓演奏集団 DRUM TAO〜スペシャルインタビュー

30周年記念北米ツアー
和太鼓演奏集団 DRUM TAO

和太鼓を中心に和楽器を駆使し、圧倒的なパフォーマンスで人々を魅了するDRUM TAO(ドラム・タオ)。約3カ月半にわたって上演された30周年記念北米ツアー2024「夢幻響」が、4月22日の夜、ベナロヤ・ホールにて幕を閉じました。公演前、北米ツアー・リーダーの福水創志郎さんにDRUM TAOの魅力について語っていただきました。

取材・文:フォーリー由香 写真:シアトル・シンフォニー提供

DRUM TAO■1993年に結成。大分県を拠点に活動する和太鼓のパフォーマンス集団。伝統的な和太鼓演奏に現代のエンターテイメント要素を融合させた独自の世界観で観客を魅了し、国内外で高い人気を博している。

中央に大太鼓の三つどもえが浮かぶ

© Nick Klein

―パフォーマンスやアイデアの源はどこから?

本拠地で共同生活をしている場、「TAOの里・グランディオーゾ」の雄大な自然です。四季折々の景色やそこに生きる多くの動物たちが与えてくれる感動が、曲やパフォーマンスのアイデアの源となっています。場所は大分県と熊本県の県境にある標高約1000メートルの久住連山くじゅうれんざんで、夏は暑く、冬は-10度まで下がります。そこでの日々のトレーニングや稽古により、ダイナミックな動きが可能になり、皆が衣食住を共にしているからこその唯一無二の一体感が生まれます。また、一年を通して日本全国津々浦々、世界各国を3つの班に分かれてツアーをしているので、各々が訪れた場所で受けたインスピレーションも、積極的に楽曲制作に取り込んでいます。

―結成以来の大きな転機は?

私が入団する前の話ですが、海外ツアーが始まるきっかけとなった2004年のスコットランドの芸術祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」に参加したことだと聞いています。当時、かなりのセンセーショナルなデビューだったようで、日本のかっこよさ・美しさ・繊細さを、エンターテイメントを通して世界に表現できるようになりました。

―トレーニングやメンタル面での準備はどんなことをしていますか?

シーンやメンバーによりさまざまですが、海外ツアーでは特に食事を大事にしています。長期の海外滞在は疲労とストレスが溜まりやすく、ご当地のものを食べることは楽しみでもありますが、そればかりだと心身への負担が大きくなります。可能な限り自炊をして日本食を食べるようにしています。体型キープにもつながりますし、何よりみんなで同じテーブルを囲み食事して、会話することを大切にしています。

音に合わせた振り付けも見事にそろっていた © Nick Klein

―異国の公演で印象に残るエピソードや思い出を教えてください

2年前のアメリカ・ツアー初日の公演です。この時はコロナ渦真っ只中で、マスクが義務化されていた頃。日本では少しずつ公演回数が戻ってきていたものの、客席は政府の方針で半分しか公開されておらず、その半分でさえも埋まらない中、表情はマスクで隠れ、声も出せないので何をしても乾いた手拍子が返ってくるだけという公演が続き、誰もが終わりの見えない自粛ムードで疲弊しきっていました。そんな中、急遽決まった1カ月のアメリカ・ツアー。反対意見もある中での出発でした。

通常の海外公演は、海上コンテナいっぱいに楽器や機材を積み込んで日本から輸送するのですが、各国の港もコロナの影響で閉鎖しているためかなわず、本来の半分程度の楽器で、舞台装飾は一切なし、楽器の台は急遽自作したものでした。準備期間も少なく、多くの不安を抱えながらの初日公演でしたが、始まってしまえば1曲目が終了した時点で拍手喝采。最後はスタンディング・オベーションで、緞帳どんちょうが閉まってもなお鳴り止まない拍手や歓声は、コロナ禍が始まって以来2年間ずっと待ち望んでいた以上のもので、いまだに鮮明に覚えています。当時のメンバーも皆、興奮状態でした。あの感動は一生の思い出です。

観客席に背を向け打つ。鍛え抜かれた上半身が露わになった

© Nick Klein

―メンバー間で流行っていることはありますか?

筋トレですね。アメリカでは日本と違い、どのホテルにもジムがあるため、筋トレができる機会が多いですし、何よりこちらは大きい人が多いので刺激をもらって、モチベーションを高く維持できています。

―将来の展望や今後の目標について教えてください。

より多くの人や世界にDRUM TAOを知ってもらうことです。アメリカやヨーロッパ、シンガポールは毎年のように訪れていますが、南米やアフリカ、中東など、まだまだ未開拓地がたくさんあります。現地での公演に加え、ソーシャル・メディアなどでも発信していきたいです。

舞台だけではなく、クラブやフェスで演奏し各国のDJやアーティストとコラボをする「CLUB TAO」という企画も最近始まりました。このような活動で、世界中にDRUM TAOの名が知れ渡るのが目標です。

本来、シアトル公演は2020年に行う予定だったが、ツアー中のパンデミック発生により中断・帰国せざるをえなくなり、結果的に2014年以来10年ぶりのシアトル公演となった。2020年の公演を楽しみに待っていたたくさんの人が、今回チケットを購入したという。

「コロナ禍以来、4年ぶりとなる長期海外ツアーを支え、応援してくれた人への思いや感謝を、30年の歴史で最高傑作の舞台だといわれているこの北米ツアーの千秋楽、シアトル公演で全て出し切りたい、楽しんでいってほしい」と熱い思いを語ってくれた。

メンバー11人が一体となって創り上げた約2時間の舞台は、日本の美が凝縮されていた。高速かつ精確に奏でられる大小さまざまな和太鼓と、三味線や尺八、篠笛、琴などの和楽器で織りなされる幻想的な楽曲。扇子や和傘、剣を巧みに操った力強くも雅な舞が彩るパフォーマンス。どのシーンを切り取ってもその素晴らしさが伝わるまさに圧巻の公演だった。

今後もますます活躍して日本の美を世界へ届けてほしい。シアトルでの次回公演は、2年後に予定されているそう。今回、機会を逃してしまった方は、インスタグラムをフォローして最新情報をチェック! ぜひ足を運んで感動を体感しよう。

@drum.tao_official

フォーリー 由香
2023年からシアトル在住。アウトドアもインドアもいけるが、風呂なしキャンプだけは苦手。バケットリストは、象に乗ること、ノーマン・ロックウェル美術館に行くこと、モアイ像を見ることなど更新中。