日本で唯一の女性バイリンガル・スタンドアップ・コメディアン
「小さいころから人を笑わせることが好きで、いつも心の隅にコメディアンになりたいという思いがありました」と言うKaoriさんは、大学生の時、バージニア州の大学に1 年間留学。その際に、コメディアン、クリス・ロックのショーを見たことがきっかけで、スタンドアップコメディーに魅了されたそうだ。「でも始めたばかりの頃は、自分にも自分の英語力にも自信がなくて、なんとなくしかやっていなかったんです」。そんな時、アメリカの映画界で活躍する日本人に「英語でスタンドアップができる日本人女性なんていない、絶対に続けるべきだ」と背中を押され、本格的に活動していくことを決意した。
彼女のトレードマークはセーラー服。「海外で今一番認知されている日本の若者文化は、アニメやコスプレ。できるだけ、そういったポップな文化を取り入れていきたい」と語る。日本でよく用いられるフリップボードを使ったネタや、日本語訛りの英語をわざと使ってアメリカ人を笑わせる。日米のユーモアの違いについては、「日本人が面白いと思うこととアメリカ人が面白いと思うこと、その2つにきっと重なる部分があると思うんです」と言う。重なる部分を見極めて、そこから日本語でも英語でも面白いネタを作っていくそうだ。
アメリカで精力的に活動
2014年の4月にはワシントンDCで毎年行われる全米桜祭りに出演し、フリップボードのネタや、英語と日本語の違いを活かしたネタなどを披露。「フリップボードって日本の漫画に似ているし、観客の皆さんにはアニメを見ているような感覚で楽しんでいただけたみたいです」と振り返る。
本場ニューヨークでコメディアンとしてのキャリアを確立したいという目標を持っているKaori さんは、この時ニューヨークにも足を伸ばし、コメディークラブなどいくつかのブッキングに成功した。しかし、クラブが開くのは夜。昼間の時間も無駄にしたくないと、ニューヨーク地下鉄でのゲリラライブを実行した。
「コメディーで少しでも報酬を得るというプロの経験がしたかった。チップは大金ではないけれど、報酬には変わりないですからね」。さすがに心底緊張したそうだが、YouTubeの映像には「日本人女性のスタンドアップ・コメディアンって寿司のネタほど新鮮でしょう?」「みんな、日本のアニメのキャラクターは知っているけど、総理大臣は誰だか知っている?」などと乗客に会話を投げかけ、笑いに巻き込んでいくプロとしての彼女の姿が映っている。たくさんの人が行き交う地下鉄では、誰が見ているか、どんなチャンスが転がって来るかわからない。「ニューヨークに行く機会があれば、また絶対に毎日地下鉄ゲリラライブをやります!」と断言する。
今回出場したシアトル・インターナショナル・コメディー・コンペティションでは、毎日会場が変わり、それもコメディークラブだけ でなく、映画館やレストランと様々。場所によってはフリップボードなど日本から用意してきたネタは全く使えないこともあったそうだ。観客の年齢層もバラバラ。「日本人というところですでに観客との間に距離があるので、距離を縮めるために、その場でその場で即席のジョークを作ったりしましたね」。観客にスポーツファンが多く見受けられた時には、シアトルでも活躍するスポーツ選手にまつわるジョークや、ウッドビーアイランドでは日本人の礼儀正しさと島という立地を用いて「お辞儀をしなかったので島流しとなりここに来た」など、アドリブで会場を沸かせた。 出場を振り返ってKaoriさんはこう言う。「他のコメディアンのパフォーマンスを見てすごく勉強になりました。ネタのデリバリーや、緩急のつけ方、英語力など、今後の課題を見つけることができ、とてもいい経験になりました。」
夢はコメディーで国際協力
現在は、世界で評価を受けている日本の文化「クール・ジャパン」に関心の高いマレーシアなど、東南アジアにも活動範囲を広めている。目標はコメディーで国際協力をすること。「コメディーを通して、笑いや元気を必要としている国や地域に行きたいと思っています。」
プロフィール:Kaori
日本で唯一の日本人女性&バイリンガルスタンドアップ・コメディアンとして、日本国内外で活動。「COOLJAPAN COMEDIAN」として、日本のお笑いスタイルや文化、アニメなどのポップカルチャーを取り入れたパフォーマンスを行う。石井光三オフィス所属。
kaoricomedy.com www.facebook.com/kaori.comedy