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アーティスト 太田翔伍さん 言語にとらわれず伝えるアートの魅力

言語にとらわれず何かを伝えられるのが アートの魅力のひとつ

アーティスト 太田翔伍さん

シアトルを拠点にデザイン活動を行う太田翔伍さんが、6月9日、フリーモントにあるライトハウス・ロースターズで、ポップアップ・イベントを開催しました。太田さんのバラエティーに富むスタイルはどのようにして生まれるのでしょうか。作品づくりの秘密に迫ります。

(取材・文:小川祐理子)

売れっ子の「スタイリスティック・カメレオン」

アイダホ大学に進学し、そのままアメリカでアーティストとしてのキャリアを築いた太田さん。これまでに手がけた作品は、セブン・コーヒー・ロースターズ、シアトル水族館、スターバックスなど、多くはシアトルの地元ビジネス向けだ。たった1本の線で複雑な絵を描くこともあれば、ダイナミックな壁画を作り上げることもある。時には、野菜や木、デニム生地といったユニークな材料を使用することも。このように、あらゆるクライアントのニーズに応じつつ独自のテイストを打ち出す太田さんは、「スタイリスティック・カメレオン」とも呼ばれている。「さまざまなスタイルを取り入れ、いろいろな分野のアートやデザインに携わっていることが強み。常日頃から、さまざまなジャンルのアーティスト作品を見て勉強し、次の作品につながるようアンテナを張っています」


ライトハウス・ロースターズにある展示作品。「自分が見た時に欲しいと思うかどうかを考え、恥ずかしくないものができるまで人には見せない」。それが、アーティストとして絶対に譲れない、太田さんのこだわりだ

そんな太田さんの仕事のスタンスは、「スケジュールとニーズさえ合えば、来るもの拒まず引き受ける」というもの。レストランのブランディングから、自転車やパズル、ビーチタオルのデザインまでをこなす。ジャンルは違えど「アイデアを出してカスタマイズする過程が楽しい」と言う。デザインだけではない。展示会やイベントなどにも積極的に参加。今回のライトハウス・ロースターズとのコラボレーションもそのひとつだ。リクエストされた絵をコーヒー豆袋に描くという、楽しさいっぱいのポップアップ・イベントは多くの地元客を笑顔にした。

 

作品を通じてポジティブなメッセージを伝えたい

アパレル・ブランドであるフェイラーのロゴや、ルラ・サラダのフード・トラックなど、太田さんの作品はシアトルの日常に溶け込んでいる。独創的でついつい興味をそそられるデザインは、シアトルで生活している人であればきっと1度は目にしたことがあるだろう。「シアトルの人が日常の中で自分の作品を目にし、少しでもハッピーな気持ちになってくれたらうれしい。写真を撮ったり、子どもに見せてあげたり、それだけでポジティブなメッセージが十分伝わると思います。『お、かっこいいな!』くらいの感じで、チラッと見てくれたら僕としては大満足」と、太田さんは語る。

2016年に期間限定で提供されたスターバックスの「グリーンカップ」のデザインは代表作のひとつ。多種多様な人々が1本の線で描かれているデザインは「結束(Unity)」を表す。大統領選挙を目前に控えた米国で、このカップは反響を呼んだ。ひとりのおばあさんから「あなたの作品のように、これからもっとたくさんの人々が助け合う時代になっていって欲しいわ。ありがとう」と、感想を受けたことが印象的だったと話す太田さん。「アートの魅力のひとつは、文字や音がなくても何かを伝えられること。作品を通じて、言語にとらわれることなく、良いメッセージをどんな人にも伝えることができます。それができているのなら、それこそが自分の作品の魅力だと言いたい」

ライトハウス・ロースターズでは6月いっぱいの予定で、太田さんの作品10点を展示・販売している。この機会にぜひ足を運んで、作品のメッセージを感じてみて欲しい。

太田翔伍◼️岐阜県出身。日本の高校を卒業後、アイダホ大学でアートを専攻。シアトルのデザイン・スタジオ、モダン・ドッグ・デザイン・カンパニーに勤務した後、2012年11月にタイヤマン・スタジオを立ち上げ独立。www.tiremanstudio.com

 

ライトハウスロースターズでのポップアップイベントにて店内には太田さんの作品を目当てに訪れたたくさんの日本人客の姿も


Lighthouse Roasters

400 N. 43rd St., Seattle, WA 98103
営業時間:月〜金6am〜7pm(土日6:30am〜)
☎206-633-4775
https://lighthouseroasters.com
※店舗での作品の展示・販売は6月30日(日)まで。購入の場合、受け取りは展示会終了後。