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国際家族を支える法的専門支援と地域連携〜シアトルの知恵ノート

知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

国際家族を支える法的専門支援と地域連携

異なる文化や言語を背景に持つ国際家族が直面する問題には、法律の壁を超えた複雑さがあります。そんな課題に正面から取り組むのが、シアトルを拠点に活動する非営利団体インターナショナル・ファミリーズ・ジャスティス・コーリション (IFJC)です。公平な法的支援を核に、多文化社会で安心して暮らせる未来を目指し、日々支援を続けています。その活動と信念を詳しく紹介します。

インターナショナル・ファミリーズ・ジャスティス・コーリション

金城テリー■多言語化・翻訳技術の分野で20年以上活躍し、Microsoft、Uber、Amazonといった世界的企業でグローバル製品の展開に貢献。異文化間コミュニケーションのエキスパートとして、多くのプロジェクトでその専門知識を発揮する。2024年にIT業界を引退し、現在はIFJCのエグゼクティブディレクターとして、ワシントン州に住む移民家族が司法制度へ公平にアクセスできる環境づくりに尽力している。

International Families Justice Coalition

705 2nd Ave., #1500, Seattle, WA 98104
☎️206-407-9899、contact@ifjc-us.org
ifjc-us.org

国際家族を取り巻く現状とIFJCの役割

移民大国アメリカ。2020年時点で外国生まれの住民は4,000万人以上にのぼり、全世界の移民人口の約20パーセントを占めています*1。中でもワシントン州における近年の移民の増加は顕著で、2010年から22年にかけてシアトルを含むキング郡では47パーセントもの人口増加が記録されました。この増加率は、全米の郡の中でも2番目に高いものです*2。

この急速な増加の陰で、多くの国際家族がさまざまな困難に直面しています。専業主婦・主夫として家庭を支える外国生まれの配偶者、そしてその子どもたち。彼らは納税者として認識されないため、立法府(法律を制定する国家機関)でその声に耳を傾けられることが少ないのが現状です。さらに、家庭内暴力の被害者であっても対処の方法が分からず、加害者と見なされるケースさえあります。孤立が孤立を呼ぶ悪循環、まさに「声なき被害者」となってしまうのです。この構造は社会的孤立を深めるだけでなく、経済的困難や精神的な負担を長期化させる要因にもなります。IFJCは国際家族が抱える問題に正面から向き合い、法的支援を基盤とした解決策を提供することで、希望の光を灯しています。

IFJCの中心的な取り組み:法的支援

IFJCの活動の核は法的支援を通じて国際家族の生活基盤を守ること。以下のような幅広い分野で専門的なサポートを行っています。

・ 離婚手続きや親権争い
文化や法律の違いで複雑さが増す問題です。IFJCは弁護士を通じて代理手続きや相談を行い、安心して法的プロセスを進められるよう支援しています。
・ 家庭内暴力に対する支援
家庭内暴力は、特に移民家庭において表面化しにくい問題のひとつです。IFJCは、被害者の安全を第一に考え、法的措置や避難先の確保、心理的サポートを被害者に寄り添いながら包括的に提供します。
・ 移民法関連の問題への対応
ビザの取得や永住権の申請、家族統合に関する課題を抱えるクライアントには、適切な専門家や関連団体を紹介。必要な情報とリソースが届くよう間接的なサポートを行なっています。
・ 法律手続きの伴走サポート
法的知識が十分でないクライアントでも安心して手続きを進められるよう、書類の準備、弁護士との面談への同席、セミナーによる基礎知識の提供などを通し、支援を行っています。

 

法的支援を補完する活動:コミュニティーサポート

法的支援を基盤に、コミュニティー全体を支える取り組みにも力を注いでいます。

・ 言語的・文化的サポート
言葉の壁を無くすため、クライアントの母国語を話す弁護士を探し、適切にマッチング。翻訳や通訳以外で、言語的障害を最小限に抑えるリソースを整備しています。
・ 心理的サポートとの連携
法的な問題は精神的なストレスを伴うもの。心理カウンセラーやセラピストと提携し、必要に応じて専門家を紹介することでクライアントが安心して法的手続きに臨める環境を整えています。
・ 教育・啓発活動
地域全体の法律知識向上を目指し、セミナーやワークショップを開催しています。2024年12月にはシアトル大学で「国際結婚における家庭内暴力と家族法」をテーマにセミナーを実施。法律学者、心理学者、セラピスト、現役弁護士、法廷通訳官がパネリストとして登壇し、多角的な視点で課題を議論しました。今年1月にはワシントン大学ボセル校で「法的平等と多文化的配慮」がテーマのワークショップに登壇。地域の法的リテラシー向上に大きく寄与しています。
IFJCの活動は、ワシントン州政府の助成金や地域の寄付によって支えられています。連邦低所得者指針100から200パーセントに該当する世帯には無償または低価格のサービスを提供。収入基準を満たさないクライアントにも必要なサポートをするため、弁護士紹介やメンタルヘルス支援を行っています。透明性を重視し、多くのパートナー機関と連携して運営しています。
未来への展望
現在IFJCはワシントン州に基盤のある国際家族のみをサポートしていますが、今後は連邦政府や他州の団体との連携を深め、全米規模で支援の手を広げる計画です。また、オンラインリソースを活用し、地理的な制約を超えた支援の実現を目指しています。ボランティアの募集や地域社会との協力を通じ、困難な状況に置かれた国際家族の声を届け、法的権利を実現できる社会を築くことを目標にしています。

日本人コミュニティー向けセミナー開催

国際結婚における家庭法と家庭内暴力をテーマにした無料セミナーです。離婚などの際に弁護士と円滑にコミュニケーションを取るために、知っておくべきポイントについて解説します。
日程:3月8日(土)3pm~5pm
場所:Bellevue Library
1111 110th Ave. NE., Bellevue, WA 98004

寄付・ボランティア募集
公式ウェブサイト(ifjc-us.org )では寄付やボランティアを募集中。皆さまのご支援をお待ちしております。