子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
中学進学を前に親も心の準備を
まだまだ幼いと思っていた子どもが、いつの間にか小学校を卒業して中学生に。思春期に差しかかる子どもは中学に入ると、より多感な年頃を迎えます。中学生の息子の話によると、トイレにたむろして授業をサボり、奇抜な姿で登校し、中にはドラッグを持ち込んだり車を盗んだりして捕まる生徒もいるとのこと。アメリカの中学生のリアルな姿が目に浮かびます。新しい環境にとまどい、上級生の言動などに緊張やストレスを覚える子も多いことでしょう。親子共に不安を和らげ、子どもが新生活にスムーズになじめるようにする方法をいくつか紹介します。
まず、アメリカの中学校の授業システムは日本と大きく異なり、ホームルームはなく担任の先生もいません。大学の講義と同じように、生徒は授業ごとに教室を移動する必要がありますが、休み時間はたったの5分程度。慣れない中で大勢の生徒と入り交ざって時間通りに教室にたどり着けるか、心配する新入生もいるのではないでしょうか。大抵の学校では始業前の8月下旬に説明会があるので、親子で参加して学校の様子を見ておきましょう。事前に時間割をチェックし、各教室の場所を把握できれば子どもは安心します。また、それぞれ個別のロッカーが割り当てられるので、学校側がロッカーの鍵を支給するかどうかを確認し、鍵を事前に入手して使い方を練習するのも良いですね。ほかにも、指定の文房具やノート類をそろえる、同じ中学校に通う友だちと夏休み中に遊ばせるなどして、準備を進めるのも有効です。
授業内容も難しくなるので、最初のうちは子どもが授業や宿題についていけるようにフォローしましょう。慣れてきたら自主性を伸ばすためにも、基本的には本人に任せて。わが家では、親が介入するのは未提出の宿題の通知が来た時のみと決めています。また、中学にはさまざまな部活動やクラブがあります。子どもが興味を持ちそうなものが見つかれば、参加を促して活動範囲を広げる手助けをしてあげましょう。
中学生では感情の起伏も激しくなり、ちょっとしたことでやる気や自信を失うことも。自身の中学時代の挫折や失敗談を子どもに話し、「失敗しても大丈夫」、「不安を感じるのは自然なこと」と教えてあげてください。何が不安かわからない子もいるので、勉強、友人関係に関してどう思っているかを聞き、不安を感じているようであれば、解決策を話し合いましょう。「いじめを受けたり、目撃したりしたらどうする?」、「友だちに嫌なことを強要されたら?」など、事前に対応がわかっていれば、いざという時に落ち着いて行動できる可能性が高まります。
また、思春期の子どもは、自分がどう見られているかを過剰に意識し、大人が考えている以上にピアプレッシャー(同調圧力)によるストレスを感じやすいもの。親よりも友だちを優先するようになり、「取り残されることへの恐れ(FOMO:Fear of Missing Out)」からSNSが手放せない子もたくさんいます。子どもがなんとなく元気がないと気付いたら、まずは話をじっくり聞いてあげましょう。親が自分を無条件で受け入れてくれていると思えば、子どもは本当に助けて欲しい時に親を頼ります。「悩みがあればいつでも言ってね」と繰り返し伝え、深呼吸や好きなものリスト作りなど、気持ちを落ち着かせる方法を教えておくのもいいでしょう。また、親が子どもの話をダメ出しせずに聞いてあげると、子どもも自然と聞き上手になり、良好な友人関係を構築できます。
ただし、反抗期真っ盛りの子どもでは、親がいくら傾聴しようとしてもうまくいかない場合があります。自我が育っている証拠だと喜び、長い目で見守っていたいところですが、毎日のように怒鳴り合いのけんかになる、口を利かない、成績が急に落ちるなど目に余るようなら、うつや不安症状かもしれません。2週間以上、同じ状態が続くのであれば、専門機関のサポートを受けることも検討しましょう。備えあれば憂いなし。思春期におけるさまざまな課題に親子で取り組みながら、子どもが充実した中学生活を送れるよう、支えていけるといいですね。