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ガミガミおばさん〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第28回 ガミガミおばさん

だまされた! と気が付いたのは全て終了したあとだった。

40年余ぶりに帰国し、実家に住居を構え、インターネットはNTTドコモNTTフレッツ光というのをお店で契約をし、全て順調だと思っていた。

何カ月か経ち、「家の付近に2ギガが設置されて便利になったから、工事費無料で付け替えをしても良いか」という内容の電話がかかってきた。NTTの名前がチラホラ出て来ていたので、ドコモの子会社かと勝手に思い込んでしまったのだ。いろいろ聞かれて、結局は電話でファースト光というプロバイダーと契約をする形に。つまり、ドコモと二重契約をしたことになる。

インターネット回線のプロバイダーは、ドコモ光、auひかり、ソフトバンク光を始め、なんだかわからないけれど、「光(ひかり)」という字が付いているのが、34項目ほどある。東京辺りの電話回線は全てと言っていいほどNTTだ。それぞれの会社がNTTとの契約なので、NTTの名前を出されると混乱する。そのうち書類が届いたが、急きょシアトルに行くことになり、読んでいなかった。全て、ドコモの子会社との思い込みで……。

宅内工事の日にちを決め、その後1週間で外の工事。終わって書類にサインをするのかと思うと帰ろうとしている。

「何かサインしないでいいんですか?」
「そういうものはないです」
「でも、もし何かあったら、どこに連絡したらいいのか、いつ、何時に工事が完了したとか、そういう記録のようなものにサインしなくていいのかしら?」

「ない」の一点張りで会社の人と電話をしている。電話ではお互いに正当だと確認し合っている様子。で、私が話したいと言うと電話を渡してくれるが、何の進展もなくマニュアルに載っているようなことをリピート。らちが明かないので上の人に伝えてもらうように話し、工事の人に、
「私のように何か書類が欲しいという人はいないのですか?」と聞くと、「いますよ。でも、大体、『ない』と言うと『そうですか』って引き下がりますよ。こんなにガミガミ言われたの、初めてです」と声を荒立てた。

あぁ、これが小さい頃に聞いていた「ガミガミおばさん」ということか。イメージが違うなぁ。

個人的に怒っているわけじゃないと説明して、「じゃあ、あなたの名前を聞いてもいいかしら? 私がいない時に何かあって、娘がどこに連絡したらいいかわからないでしょ?」と言うと、名刺をくれた。なんだ、名刺を持っていたのか。初めからそれをくれていたらガミガミおばさんにならずに済んだのに。

ドコモに電話をすると二重契約だということがわかった。工事費、違約金を計算すると、ドコモを解約したほうが損害は少ないということで落ち着いた。今後2年間、何もトラブルがないことを祈る。

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。