ブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」シアトル公演
取材・文:本田絢乃
トニー賞で最優秀ミュージカル賞を含む8部門を受賞し、7年間もロングラン上演された「ヘアスプレー」が北米ツアーでカムバック! 4月4日から9日まで、パラマウント・シアターにて行われたシアトル公演初日のプレミア・ナイトを鑑賞しました。
ミュージカル「ヘアスプレー」は、1988年公開の同名映画を原作とした青春ラブコメディー。実は2002年6月に初演が披露されたのは、シアトルのフィフス・アベニュー・シアターだ。その後、ブロードウェイへ場所を移して大ヒットを記録し、傑作ミュージカルの仲間入りを果たした。シアトルに縁深い作品ということで、本公演はプレミア・ナイトから大盛況! 会場には幅広い年齢層の観客が集い、終始笑いに包まれる一夜となった。
主人公は、1960年代初頭のメリーランド州ボルチモアで暮らす、ぽっちゃり体型がチャーミングな16歳のトレイシー。テレビの人気番組への出演を夢見てダンスを始める、という物語だ。人種差別やルッキズムの壁をなくそうと奮闘する姿が見どころで、重いテーマを扱いながら、こんなにも幸福感を味わえる舞台はなかなかないだろう。
愉快で前向きなトレイシーもさることながら、観客の注目を集めていたのはアンドリュー・レビットさん演じる母親のエドナだ。男性俳優のキャスティングが映画からの伝統で、アドリブや軽快なダンスを交えながらユーモアたっぷりに立ち回り、ムード・メーカーを担った。ほかにも、妻と娘をこよなく愛する父親、ちょっとお間抜けな親友、人気者でクラス一のモテ男、意地悪な同級生など、個性豊かなキャストたちが作品を盛り上げる。
「ありのまま、自分らしく生きよう」という普遍的なメッセージを、楽しく、明るく、幸せいっぱいに歌とダンスで伝えてくれる秀作だった。