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カスタムの名のもとに〜みんなの広場

カスタムの名のもとに

アメリカに住み始めて半年以上経つが、常に選択を迫られる日々だ。ピザ屋に行けば、オプションが多過ぎて注文に困る。スーパーでの牛乳選びは、ラベルをしっかり読まなければ、どんな違いがあるのかさっぱりわからない。

呪文みたいなメニューばかりのスターバックスがある街で暮らすのだから、考えてみれば不思議はない。だが、人生のほとんどを日本で過ごしてきた身には、かなりのカルチャーショックだ。カフェはもちろん、タピオカ・ドリンク店でも、顧客の要望に応えられるよう、冷蔵庫は何種類ものミルクでいっぱいだ。

特に牛乳に関しては、自分が乳糖不耐症なのかどうか考えたことすらなかった。選択肢の少なさが、そもそも疑問につながらなかったのだろう。日本でも、自動車のパーツ変更など、カスタム文化は存在する。ただ、アメリカでは桁違いだと感じる。

調べてみたところ、まず牛乳の歴史が違っていた。アメリカは古くから酪農を行うが、日本で庶民の食卓に牛乳が登場するようになるのは明治時代に入ってからだ。ゆえに、日本人の3人に1人は乳糖不耐症だという。牛乳の成分、ラクトース(乳糖)をうまく吸収できずに腸内環境が乱れるのだとか。

では、なぜ需要が多いはずの「ラクトースフリー」牛乳を日本では見かけないのか。パッケージに生産地や「おいしい」などの形容詞は入っても、乳糖に関する記載を目にしたことがない。一方、アメリカではどんな成分の牛乳なのかがひと目でわかるよう、文言が大きくデザインされている。

日本だと味の好み優先なのか。どうやら私は乳糖不耐症のようだが、日本では毎日のように大好きな牛乳を飲んでいた。生乳に近い味わいとされる低温殺菌牛乳を好み、やや高価な生乳使用のカフェオレを大人買いすることもあった。しかし、アメリカではまだお気に入りの牛乳が見つかっていない。日本の牛乳は味が濃いと言うが、それが関係している? 中学時代、アメリカ人教師から「日本では牛乳を水で薄めて飲んでいる」と聞いたのを思い出した。

結局は、権利と多様性を重んじるアメリカ社会だからこその選択肢の多さなのかもしれない。選択は権利であり、自分を肯定する証なのだ。今では、選択に迷うときは「店員におすすめを聞く」という荒業で乗り切っている。自分の器に自分の好きなものだけを入れることができるカスタム文化。まだ慣れていないせいか、お得なような気もしてきた。日本に帰れば、この違いがより鮮明になるのだろう。

(JL/シアトル)

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