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芥川賞受賞作家、平野啓一郎さんがシアトルに!北米日本文学フォーラム〜特別レポート

芥川賞受賞作家、平野啓一郎さんがシアトルに!北米日本文学フォーラム

3月16日、作家の平野啓一郎さんが国際交流基金と日本ペンクラブが共催する「北米日本文学フォーラム」に登壇。紀伊國屋書店でサイン会も行われ、シアトルのファンを喜ばせました。

取材・文:本田絢乃

今回のイベントは、3月14日から17日までシアトル・コンベンション・センターの「アーチ」ビルにて開かれたアジア学会(AAS)年次大会の一環として開催された。そのゲスト・スピーカーに招かれたのが、マルチに活躍する小説家の平野啓一郎さんだ。

◀︎ 講演会の模様は、国際交流基金トロント日本文化センターのホームページで後日配信予定

 

紀伊國屋書店でのサイン会の様子

当日は、国際交流基金トロント日本文化センター所長の山本訓子さん、コーディネーターで日本ペンクラブ常務理事の佐藤アヤ子さんの挨拶に続き、平野さんが「私とは何か?という問い」をテーマに英語で講演。1歳の時に父親を亡くすが、母親や親族から伝え聞いた父親の話が自身の記憶となり、小説の創作に大きく影響を与えたそう。そうした生い立ちや実体験に触れつつ、三島由紀夫の『金閣寺』に感銘を受けて日本文学にのめり込むようになった作家としての歩みを紹介した。また、平野さんらロスト・ジェネレーション世代が感じる日本の社会の問題点や世代間の違い、環境に応じて人は自分を変えていくという、平野さんが提唱する「分人主義」の概念についても語った。

最後の質疑応答では、「夏目漱石の思想に通じるものを感じた」、「分人主義という考えには、どのようにたどり着いたのか?」、「深い疎外感を議論するうえで、日本文学が貢献できることは?」などの声が聞かれた。平野さんは独自の理論を交えながら、時間ぎりぎりまで真摯に回答した。

そのあとは、紀伊國屋書店でのサイン会。英語版の小説を手に、日本人含め多くの読者が集まり、平野さんとの対話を楽しんだ。

読者ひとりひとりに対し、丁寧に接する平野さん

筆者も『マチネの終わりに』にサインしてもらい、記念撮影
*平野さんの小説はシアトルでも紀伊國屋書店で購入可。在庫は直接問い合わせを
ソイソース読者へメッセージ

実は2021年に書いた短編小説、『ストレス・リレー』にシアトルを登場させています。主人公は、シアトルの空港で腹が立つ出来事があって、ストレスを抱えたまま日本に帰ってくるという設定でした。東海岸だと飛行時間が長いので、その途中で怒りを発散してしまうのではないかと(笑)。それで、西海岸のシアトルを選んだと記憶しています。

私自身はシアトルを訪れるのは今回が初めてなのですが、天気にも恵まれ、パイクプレースなどで観光を楽しめました。この時期に快晴が続くのは珍しいとのことなので、ぜひ「晴れ男」として記憶に留めていただければ! 海外でも僕の小説を読んでくださる皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。まだの方にも、これを機にぜひ手に取ってもらえればと思います。

平野啓一郎1975年、愛知県蒲郡市生まれ。福岡県北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年の在学中に文芸誌『新潮』に投稿した「日蝕」により第120回芥川賞を受賞。以後、多彩なスタイルで数々の作品を発表し、各国で翻訳されている。長編英訳は1作目『ある男』に続き、『マチネの終わりに』を2021年に刊行。最新小説は、「自由死」が合法化された近未来の日本を舞台とする『本心』。