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シニアがなんだーカナダで再出発(その11) BC州で医療体験

カナダの公営医療保険の普及度や掛け金の安さについては、以前から聞いてはいた。米国は最近ようやくユニバーサルヘルスケアを採用したが、カナダは1984年から全国的にメディケア・システムを基本としたヘルスケアを設置している。

ブリティッシュコロンビア(BC)州では月額固定の保険料を医療財政の原資とし、自己負担額は非常に少ないか無料。州の住民は医療保険に入ることが義務付けられ、基本保険は州当局が運営している。掛け金は通常、個人加入の場合は月約70ドル。私はこれに加え、基本保険でカバーされない準個室の入院費や歯のクリーニング費用など、部分的にカバーしてくれる任意の民間補助保険に入っており、この掛け金が月額100ドル強だ。

医者にかかる際は、まずジェネラルプラクティショナー(GP)と呼ばれるファミリードクター(かかりつけ医)を選び、GPが患者の全般的な医療記録を管理する。GPを持たない住民や、軽い疾患・怪我については近所のウォークイン・クリニックに行くという手もあるが、年次健康診断や病気の時はまずGPにかかり、必要に応じて専門医に回される。

評判の良いGPはすでに患者を沢山かかえており、新しい患者はなかなか受け入れてくれない。私が、バンクーバーの友だちに掛け合ってもらってようやく見つけたGPは、ドイツ系移民の美人女医。彼女の1回の診察は15分。診てもらう問題も一つに限られる。ところが15分はあっという間だ。しかもドイツ語訛りの英語で医療用語をポンポン言われ、詳細を聞き逃してしまう始末。健康診断では、布製ガウンではなく白い紙を渡され、それをバスタオルのように腰に巻き付ける。それで診療台に座ったら、丁度尻のところで紙が縦にビリッと破れて面食らったがどうにもならない。しかも「今日はインターンが来ているので一緒に入ってもよいか」と問う。このインターンがさらに若い女性で、死ぬほど恥ずかしかったがノーとも言えず、しぶしぶOKした。

診療室はシアトルのクリニックの約半分(3畳くらい)、3人入れば満員電車状態。診療はすべて保険でまかなわれたものの、今後我々団塊の世代が頻繁に医者通いをするようになったら、細かい相談ができる余裕などさらさらないだろうと不安が残る。

それはともあれ、健康診断の結果、美人GPから「あなたは36歳の青年の肉体を有する」と言われた。単純な私がこの医者をたちまち気に入ってしまったのは言うまでもない。

武田 彰
滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。