シカゴ郊外で暮らす兄夫婦の家に、失恋したばかりの主人公ジェニー(アナ・ケンドリック)が転がり込んで来た。兄ジェフ(ジョー・スワンバーグ)は映画監督、妻のケリー(メラニー・リンスキー)は育児のために休筆中の作家だ。無責任なジェニーのことが苦手なケリーは、息子のベビーシッターすら彼女に頼まず、マリファナ・ディーラーのケヴィン(マーク・ウェバー)に頼むほど。落ち込み気味のジェニーには小さなトラブルが絶えず、あきれ果てるケリーに対して、すべてにイージーゴーイングなジェフはなだめ役だ。ところが、ケリーの作家業に関心を持ったジェニーは、親友のカーソン(レナ・ダナム)と共に、小説のアイディアを出し合って、ケリーを助けようとする。
平和な暮らしを送っていた若夫婦の生活にさざ波を広げる困った妹の存在を、自然なタッチで見せていくインディ・コメディーで、監督/脚本/製作は兄役のスワンバーグだ。彼の前作『ドリンキング・バディーズ』同様、仲のよい俳優を集めて即興で演じさせ、彼らの持ち味とユーモアを引き出す独自の演出法で撮影された。スワンバーグの弟が家に転がり込んできた時の体験をもとに作品のアイディア得たようで、監督自身の家を使ったり、彼のよく笑う2歳の息子を出演させて、温かい家庭的な感じを出している。
小さく揺れながらも少しずつ近づいていくジェニーとケリーの関係や、妹に怒る兄の愛情など、高等教育を受けた20代過ぎの白人たちの、独特でデリケートな感情表現のおかしみを描き出そうとした作品ではないだろうか。家族ドラマは作り込みすぎると臭みが出てくるので本作の何気なさは稀少ではあるが、余震だけで大きな揺れが絶対こない物語を見続けることにやや苦労した。これが日常というものではあるが、本作の微妙さやおかしみは主人公たちと同じ階層に属す観客にしか伝わらないような気がしてならなかった。
1年間に7作品も監督して勇名を馳せた多作のスワンバーグだが、多作イコールただの水増しとならないために、人間への観察眼をさらに深めてほしいという思いを強くした。
上映時間:1時間22分。シアトルは8日よりVarsity Theatreで上映中。
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