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NFL、国歌斉唱時の不起立が大問題に

2015年1月のプロボウルでの国歌斉唱Photo by Misa Kanaoka

NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合前の国歌斉唱時に、一部の選手が起立しない点がニュースになっています。これは昨季、49ers(サンフランシスコ)に所属していたコリン・キャパニック選手が、社会の不公正と警官による有色人種への不当暴力に対する抗議として始めたも の。今季は不公正を身をもって体験したシーホークスのマイケル・ベネット選手など、他チームでも賛同選手が増える一方、主旨は理解できても他の手段を選ぶべきという人や、国旗や軍人に対する侮辱だと受けとめる人、さらにNFLがこの行為を容認するなら試合は見ないと拒絶反応を示す人もいます。

抗議行為もネックとなり新天地が見つからないコリンキャパニック選手Photo by Misa Kanaoka

大問題へと発展したのは9月下旬。トランプ大統領が演説やツイッターで、国歌斉唱時に起立しないのは国旗や軍人に対する侮辱で、起立しない選手はクビにすべきだと訴えたためです。その直後の試合の国歌斉唱では、各地でオーナーが直々にフィールドで選手と腕を組んで立つなど、選手との結束の強さをアピールしました。表現の自由を行使しただけの選手を解雇せよと言われ、沈黙したままでは同意したも同然です。根底にある問題には一切触れず、国旗侮辱は許すべからずの一 点張りの大統領に不起立選手との対立を煽られ、 オーナーも反論せざるを得ませんでした。

しかし、これで問題が沈静化するかと思えば大間違い。大統領は執拗にNFL批判を続けています。メディアの注目度が高く、支持者へのリップサービスにもなるこの話題は選挙公約を果たせていない大統領にとっては好都合。保守系の世論調査では、過半数の64パーセントが選手は起立すべきと回答しているのも追い風になってい ます。NFLも営利目的のビジネスなので、不都合な論争は避けたいところ。ファンやスポンサー離れが進めばオーナーの懐に響きます。かといって選手に起立を強制したのでは、有色人種差別を勘繰られ、不快感を与えてしまうだけに厄介な問題です。

ラスベガス発砲事件の犯人に間違われたマイケルベネット選手Photos by Misa Kanaoka

この騒動がきっかけとなり、シーホークスで は選手自らが平等と公正を求める基金を設立しています。リーグとしても選手に起立を求める 代わりに、同じような基金を設立するのも一案で しょう。10月がガン撲滅月間、11月が軍人支援月間なら、9月か12月を平等月間に指定することもできるはずです。 ただし、白人至上主義者が堂々とデモを行える今のご時勢。差別撲滅さえ、対立を招く話題だと 敬遠される可能性もあります。このコラムが皆さんの目に触れる頃には解決策が打ち出されて いるでしょうか?

[スポーツウォッチング]