春らんまん! 暖かくなり気持ちが浮き立つ季節、新しい習慣を取り入れてみたいという方も多いはず。日頃からフラワー・アレンジメントを楽しむ笠原美紀さんに、実践するうえでのヒントやアドバイスを聞きました。
子どもの頃から、いろいろ手作りするのが好きだったという美紀さん。花に興味を持ったのは、高校2年生で始めた駅前の花屋でのアルバイトがきっかけだそう。大学に進学し、日本でフラワー・アレンジメントがブームになると、憧れて受講したクラスですっかりハマってしまった。留学経験のある母親の影響もあり、もともと留学願望の強かった美紀さんは大学も外国学部英語学科を専攻し、英語の勉強を続けていたが、花への思いはますます強くなるばかり。英語教師か花の仕事か、進路に迷う中で見つけたのが、当時ベルビューにあった学校で開講していたフラワー・アレンジメントのビジネス・プログラムだった。その留学から27年、今もシアトルに暮らす。
「現在は全く違う仕事をしていますが、留学中は学校の講師の紹介でインターンシップから始め、プログラム修了後も複数の花屋でフラワー・アレンジメントの経験を積みました。シアトル・ウエディング・ショーに出展する人気の花屋に飛び込みでレジュメを持ち込み、フローラル・デザイナーの下で働かせてもらったことも。そこは夏の繁忙期では毎月80ものウエディングの装花を手掛け、ハイエンドのサロンやレストランでの仕事も多く請け負っていました。週末のイベントなどは泊まり込むこともあり、若かったとはいえ本当によく働きましたね」。花屋の仕事を離れてからも、口コミでさまざまなフラワー・アレンジメントの依頼があるという美紀さん。2015年から3年ほどは自宅でフラワー・アレンジメント教室も開いており、「ちょうどまたやりたいと考えているところなんです」と微笑む。
「フラワー・アレンジメントって、料理に似ているかもしれません。味付けでいろいろ工夫できますし、プレゼンテーションも大事。同じ花でも買う店によって色も大きさもさまざまで、12本買ったら、その1本1本の顔がまるで違う。自然からこの色が出るってすごい! そんな感動が常にあります」。依頼内容や用途によって花を選び、その人を思い浮かべながら組み合わせていく。「常に五感を大切にしています。色、テクスチャー、香り、季節を意識して、あとは感覚で。ウエディングやプロム用ではうれしい気持ちがあふれるように、メモリアルでは集まった方々の心が癒やされるようなアレンジメントを心がけています」
花の購入先だが、日本と違って近所にあまり花屋を見かけないアメリカでは、地元のスーパーを回り、入荷されたばかりの花を探すことが多いそう。トレーダー・ジョーズ、コストコ、QFC、セーフウェイなど、なじみのある店名が挙がる。「リーズナブルなうえ、回転が早いから新鮮。葉っぱが濃い緑色で元気にピンとしているものを選んで数種類の花を買い、組み合わせて使っています。花束として買うなら、メトロポリタン・マーケットやホール・フーズは質が良い印象です。これからの季節はファーマーズ・マーケットもいいですね」。葉もの、枝ものは簡単に買えないため、家の庭のほか、友人宅などから調達しているとのこと。「緑を合わせることで、もっと生き生きとしたアレンジに。実ものも大好き。庭に近所に、いろんな種類が見られるのは、自然豊かなノースウエストならではですね」
スーパーで買ってきた花束をアレンジ
花材: 八重咲きのチューリップ
① 束をバラして、余計な葉を取り除く。
【POINT】水に浸かる下半分から3分の2までの葉、垂れ下がったりフニャッとしたりする葉は取ってOK。
② 茎の部分を水洗いして土などを落とす。
③ ボウルなどの水に茎を浸し、水の中で断面が斜めになるようにハサミで切る。
【POINT】断面の表面積が大きくなるほど、水を吸いやすくなる。
④ 好みの花器にいける。さらに枝ものを足すと、より自然な仕上がりに。
【POINT】花器にはできるだけ水をたっぷり入れること。チューリップは1、2日で少し伸びるので、その分を計算して花器を選ぶ。
食卓を華やかに演出するスパイラル・ブーケ
花材 :バラ、アジサイ、アルストロメリア、カラー、ユーカリ・ポポラス・ベリー、トキワガマズミ、斑入りのアイビー
① 花はそれぞれ葉を取り除く(花の周りに少し残しても良い)。
② アジサイはぬるま湯に5分ほど浸す。水気を取って新聞紙の上に置き、花を支えるようにして包み、立たせておく。
【POINT】切ってすぐしぼんでしまいがちなアジサイも、このひと手間でシャキッとする。
③ 花材はそれぞれ、ボウルなどの水に茎を浸し、水の中で断面が斜めになるようにハサミで切る。アジサイや枝ものは、さらにハサミなどで先端をたたいてつぶし、バケツの水に入れて保水する。
④ それぞれの花材を同じ方向に斜めに重ね、束ねていく。交差するポイントを手で押さえながら、1本重ねるたびに一定方向に回すと束ねやすい。
【POINT】ブーケには葉ものも入れ、クルンと巻くなどして遊び心をプラス。
⑤ 交差するポイントの、なるべく上部を麻ひもやモールで結ぶ。その下は好みの長さにカット。
【POINT】輪ゴムだと上部で結ぶのが難しいので、クラフト用品店などで麻ひもやモールを購入しておく。
⑥ 花器にいける。霧吹きをかけるとフレッシュ感漂う仕上がりに。
【POINT】周りに花びらを散らすとゴージャスな見た目に。花器ごと贈り物にするのもおすすめ。
美紀さん流 花材選びのコツ
① 色合わせを考える
ひと口にオレンジと言っても、いろんなオレンジがある。同系色の花を組み合わせることで、簡単にグラデーション効果を発揮。紫と黄色など、反対色も合わせやすい。多色使いでは、パステル調、ビビッドカラーというふうに、トーンを同じにすると統一感が出る。
② テクスチャーに注目
ツルツルした葉、マットな花びらなど、異なる質感をミックスさせることを意識してみて。表情に変化が付き、奥行きが生まれるはず。
③ 緑のもたらす効果
花の中に2、3種類の違うグリーンが入ると差し色になるのはもちろん、全体に深みが出る。花と緑が調和するナチュラルなイメージを目指そう。
美紀さんへの問い合わせは hummingbirdflowerdesign@gmail.com まで。