昔の面影を残す、陽気で優しい街
[ハバナ(キューバ)]
アメリカと国交を回復し、ソフトパワーやテクノロジー面で着実にアメリカの影響が入り込んでいるキューバは、ありのままの姿が刻一刻と失われつつあります。美しい街並みに特殊な歴史と政治形態、そしてビーチ――魅力がいっぱいのキューバを訪れるなら、今です!
取材・文:山川 彩
豪華絢爛な街並みと絶景のビーチ
首都であるハバナの街並みは、メキシコの歴史ある都市に似て、カラフルな建物が連なる小道が魅力的。城のような豪華な建物群と市民の住むエリアが隣接しているので、少し歩くだけでさまざまな表情が見られる。大通りを走る車は、ほぼ半数がクラシックカー。車込みの風景が、キューバらしさにつながっている。
クラシックカーはタクシーとしても使われていて、普通車のタクシーとほぼ同じ値段で乗ることができる。座席はふかふかで天井が高く、乗り心地は良い。普段なかなか乗る機会のないクラシックカー体験は、キューバに来たら外せないアクティビティーでもある。
ハバナと並んで有名な都市、バラデロはビーチで有名。現地の生活がよくわかる市街地、ハバナと比較すると、ここは完全にリゾート地だ。プールやマリン・スポーツ、ナイトクラブにホテルと、リゾートに必要なものは全てそろっている。カリビアン・ブルーの海を望みながら、極上の時間が過ごせる。ハバナからはバスも出ていて、事前に予約しておけば簡単に行ける。オンライン予約も可能(www.viazul.com)。
バラデロよりさらに手軽に行くことができるのは、プラヤ・デル・エステのビーチだ。ハバナからバスで約30分、往復でわずか5ドル。バスを降りて1分ほど歩くと、ため息が出るほどの美しさで海がきらめく。
お土産はラム酒で決まり!
キューバは物価が極端に安いので、高級レストランでたくさん食べて飲んでも7ドルいかないくらい。ただし、名物のロブスターはやや高価で、1皿20ドルほど。それでも、アメリカで注文するよりは安く楽しめる。
ラム酒は、ほぼ全てのレストランでそろう。「ハバナクラブ」という銘柄が有名で、ロックでオーダーすると熟成年数別に選べる。サトウキビ生産量が常に世界トップ・レベルのキューバは、サトウキビを原料とするラム酒の生産もトップ・レベルなのだ。ハバナクラブのラム酒はとても口当たりが良く、おいしい。モヒートも人気。そのほか、チェ・ゲバラをモチーフにしたカクテルや、軽くてすっきりとした味わいのビール「クリスタル」など、安価な酒類が豊富だ。
キューバの特産品はラム酒以外に、コーヒー、葉巻も。キューバの葉巻はとても上質で知られ、気持ち良さそうに一服する人を多く見かけた。ただし、国外に持ち出せないため、注意。
伝統音楽も、キューバの顔。ボーカル、太鼓、マラカス、コントラバス、キーボードなどの楽器で構成され、アップテンポなラテンのリズムと若干のジャズ・テイストで、テンションの上がるものばか
り。レストランで演奏が始まるとたちまち人が寄って来て、踊り始めるのが現地流。なんて愉快で幸せな国なのだろうと思う。
歴史と共産主義
キューバには革命の歴史がある。革命博物館ではチェ・ゲバラら革命チームの写真や貴重な品を展示している。屋外展示では、戦車や飛行機などを間近で見ることができる。砲弾を多数受けたトラックもあり、衝撃的で心が痛んだ。
共産主義国家への入国という貴重な機会だけに、筆者にとっては目に入るもの全てが新鮮。配給があるため、スリなど財産目的の犯罪が極端に少なく、夜中でも子どもたちが道端で走り回って遊んでいるほど治安は良かった。一方で、電気系統の整備が進まず、毎日のように停電したり、商店は商売っ気がなく在庫がほぼなかったりする。
残念ながら、一般のアメリカ人の観光目的によるキューバへの入国は、認められていない(2018年7月現在)。日本国籍であれば行けるが、アメリカからの入国、米系航空会社の利用に関しては規制があるのが実情だ。日本国籍であってもメキシコやカナダなどアメリカ以外から、キューバに入る必要がある。キューバに入国するために必要な手続きおよび書類は、キューバのツーリストカードと、キューバに対応した海外旅行保険の2点だ。この2点がないとキューバには入国することができない。
ツーリストカードの取得には3つ方法があり、仲介会社に依頼する、道中の空港(取得可能な空港かどうかは確認が必要)、キューバへの入国が禁止されている国以外だと大使館での取得が可能だ。機内で購入可能とも聞くが、出発国の国民でなければならないことがあるため(例:バンクーバーからの場合はカナダ国籍の人のみ対象)、注意が必要だ。筆者は経由地のメキシコシティの空港で購入した。手続きに5~10分かかったので、時間に余裕を持って入手するよう計画したい。海外旅行保険は保険の内容を見て、キューバが対象範囲かどうか確認を。入国の際に海外旅行保険証券の提示が必要な場合もある。現在、入国規制は頻繁に変わる状況にあるので、事前に大使館や航空会社、専門の旅行社に問い合わせを。
参照:在キューバ日本国大使館