ガリ勉フェミニストを主役に据えた極上コメディー
Booksmart (邦題「ブックスマート」)
全く新しいティーン女子バディ・コメディーが生まれた。ゲラゲラと明るく笑えて、続けて2度も見てしまった。監督は本作が長編デビューの女優、オリヴィア・ワイルドだ。舞台はロサンゼルスの高校。明日に卒業式を控えたモリー (ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・ディーヴァー)のふたりは大の付く親友で、共にフェミニスト。それぞれに有名大学への進学が決まってウキウキだ。
高校時代は一切遊ばず、ガリ勉ひと筋で成績はA+。遊びまくっている同級生などは完全無視だった。ところが、そんな同級生らが進学する大学もアイビーリーグ の有名校ばかりだと、ひょんなことから知る。「え〜、私の高校生活は何だったの !?」と愕然。失われた時を取り戻そうと、モリーはエイミーに話を持ちかける。
卒業式前夜のパーティーで盛り上がり、あわよくば好きな子と楽しい一夜を過ごそうと誓い合うふたり。ところが、パーティー会場すらわからず、スマホ片手に会場探しのトホホな展開となってしまった。
本作最大の魅力は固い友情で結ばれた主人公のふたりだ。 ちょっと太めのモリーは、知識と機転、肝っ玉が詰まったハツラツ女子。彼女にリードされ気味のエイミーはレズビアンで、彼女がいくら否定しても両親はモリーが恋人だと思い込んでいる。ふたりの大真面目な超スピード会話のおかしさが、フェルドスタインらの好演もあって本作をグングン引っ張っていく。
脇を固めるクラスメートも良い。博識をひけらかす嫌味なゲイ男子、男好きでシニカルな女子、神出鬼没のドラマチック女子、人の良い金持ち男子、超クールな担任教師などなど、パターン化されたひとり勝ちのイジメっ子などは登場しないのだ。それぞれに多面的な個性を持つ高校生として描かれている点が今っぽく、頭脳もハートもキラキラの高校生の実像に近い感覚があった。
オリジナル脚本は、映画界の第一線で活躍するスザンナ・ フォーゲル、エミリー・ハルパーン、サラ・ハスキンズ、ケイト・ シルバーマンの4人の女性ライターが共同執筆。脇役のひと言も疎かにしない、よく練られた脚本で、本作の大成功につながっている。そして、何よりも本作のビジョンをしっかりと映像化したワイルド監督の功績こそ大きい。
「レディ・バード」で脇役を演じた地味キャラのフェルドスタインを主演に据えた慧眼や、弾ける高校生のエネルギーを生き生きとした映像に収めた力量は、初監督作品とは思えないものがあった。ガリ勉フェミニストを主役に、笑いたっぷりに見せてくれたのは、今を懸命に生きる女の子たちの心意気。親友は絶対裏切らない、自分の夢は自分で守る、そんな熱い熱いメッセージが胸に届く極上のコメディーであった。
Booksmart
(邦題「ブックスマート」)
上映時間:1 時間 42 分
写真クレジット:United Artists Releasing
シアトルではシネコンなどで上映中。