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ダイナミックな演奏に惚れぼれユジャ・ワン ピアノ・リサイタル〜行ってきました

ダイナミックな演奏に惚れぼれ
ユジャ・ワン ピアノ・リサイタル

2007年にボストン交響楽団と共演したことで国際的に有名になったユジャ・ワンは、現在世界各地でリサイタルツアー中です。今年は第66回グラミー賞「最優秀クラシック器楽ソロ」部門を受賞。5月17日にベナロヤ・ホールでリサイタルが開催されました。

取材・文:加藤良子

Brandon Patoc

ユジャ・ワンの魅力は聴く人を圧倒するパワフルな演奏と、その衣装だ。堅いイメージのクラシック音楽だが、彼女はいつもミニスカートやカットが大きく入った大胆なドレスを着こなし、10センチ以上と思われるヒールで演奏する。彼女の装いは度々SNSでも話題になるため、どんな衣装で登場するかワクワクしていると、会場が暗くなりステージにスポットライトが。まぶしいターコイズブルーのロングドレス姿で入ってくるなり、スタンディング・オベーションが起きた。まだ演奏も始まってないのに? とその人気ぶりに驚かされる。

1曲目は、海が大きく波打つさまを感じさせられるドビュッシーの『喜びの島』。奏者により印象が変わるが、ユジャ・ワンの演奏は息継ぎする間もなく波が押し寄せ、荒い海に引き込まれるようだった。力強い嵐のような場面では、ピアノではなくドラムを叩いているかのよう。前半が終わるとまたもスタンディング・オベーションが巻き起こった。

後半、ゴールドのビーズがキラキラと光る華やかなミニ丈のドレスをまとっての登場に歓喜の声が上がった。ショパンの『バラード第3番』は気持ちがはやるような切ないメロディーで、ダイナミックな盛り上がり部分には思わずうっとり。天に昇るような美しい響きにほれぼれした次の瞬間、ジェットコースターで真っ逆さまに落とされるような爽快なアップダウンがあった。

演奏が終わると、3度目のスタンディング・オベーション。拍手喝采に応えて、アンコール1曲目は、ずっと聞きたかったフィリップ・グラスの『エチュード第6番』。壮大な物語の主人公のような気持ちにさせてくれるメロディーに思わず息を呑んだ。2曲目、3曲目と続いても観客の興奮は冷めず、5曲目を超えたあたりからは拍手が鳴り止まないことに、やや困惑したような様子を見せる場面も。最後になる7曲目を演奏する直前、微笑みながら「あと1曲だけ」と指で合図し、お茶目な表情を見せた。

筆者のようにクラシック音楽に疎くてもここまで熱中させてくれるユジャ・ワンは、人々を新たな世界の楽しさに目覚めさせてくれる、素晴らしいピアニストのひとりだ。

Seattle Symphony
www.seattlesymphony.org