シアトル・オペラで大好評上演中の『蝶々夫人』。イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニによる同作は世界で最も有名なオペラ演目の一つだが、実は日本を題材にした話であることをご存知だろうか。
舞台は1904年の長崎。アメリカの海軍士官ピンカートンは、元士族の美しい15歳の少女「蝶々さん」と結婚して子どもを持つが、やがて任務を終えてアメリカに帰ってしまう。蝶々さんはピンカートンを信じて待ち続けるものの、彼がアメリカから新しい妻を連れて子どもを引き取りに来ると、「名誉のために死なん」と言って自決する。
この悲劇の少女・蝶々さんを演じるのは、日本人ソプラノ歌手の佐藤康子さんだ。イタリアを拠点に世界で活躍する佐藤さんは、今回の出演のために初めてアメリカの地を訪れたという。今回は特別に佐藤さんからお話を聞いた。
Q.「蝶々夫人」の一番の見どころは何ですか?
見どころはたくさんあります。舞台装置は大変質素なのですが、色彩を効果的に使っていて、見た目に美しいところでしょうか。また随所に散りばめられた日本の旋律を探してみても面白いと思います。そして何より、あどけない少女だった蝶々さんが、その身に降りかかる苛酷な運命を経て、苦しみながらもその魂を磨き、「誇り高き生とは何か」を探していくその姿を一緒に体験していただけたら幸いです。
Q.日本人の役を演じるということで、気を付けた点はありますか?
とりあえず足が外またにならないように、それから最低限の着物の所作は勉強いたしました。
Q.シアトルでの初公演を終えて、会場の反応はいかがでしたか?
大変熱狂的に迎えてくださって、ありがたいやら怖いやらでした! 客席は満員だったのですが、2500人あまりの観客が総立ちで拍手してくれているのを見たのはこれが初めてで、体中の血が湧き上がるかのようでした。
Q.ソイソース読者に向けて、最後に一言お願いします。
初めてアメリカに渡り、シアトルの舞台で歌わせていただくことの名誉を強く感じております。皆様のお耳にプッチーニの珠玉の音楽が届きましたら幸いです。お忙しい中とは存じますが、ぜひとも足をお運びくださいませ。
イタリア人によって紡がれた日本の心。それを日本人がここアメリカで演じるとなれば、私たちシアトル在住の日本人としては血が騒ぐところだろう。これまでオペラを見たことがない人でも、日本にまつわるストーリーなので親しみやすい。チケットはウェブサイトから予約可能。
佐藤さん出演日:8月12日(土)、16日(水)、19日(土)
場所:Marion Oliver McCaw Hall (321 Mercer Street, Seattle)
詳細:www.seattleopera.org ☎206-389-7676