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洗濯物と物干しハンガー〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第 35回 洗濯物と物干しハンガー

面白いことを発見した。30歳を過ぎた娘が、洗濯物の干し方を知らないと言うのだ。

シアトルのガーフィールド高校を出て、なんかの賞をもらい、ニューヨークの大学も卒業した「自慢の娘」が、である。私だって実家にいる頃、洗濯をそんなにした覚えもなければ、手伝ったことだってあまりない。でも日本で育っていれば、見よう見まねで人に聞くまでもなく、30歳になればどうにか干せた。

「あのさ、やったことないのよ。これ初めて」
「えっ、なんで?」
と聞いてから、ああ、アメリカでは干すことなんてなかったのだ、と納得。全て乾燥機である。

この夏、長女が2番目の子を沖縄で出産した。次女が、オークランドから手伝いに駆けつけた時のことだ。

「洗濯ばさみって、どういうときに使うの? このぶら下げるやつは、どういう順序でするの?」
などと、宇宙人と話しているかのよう。細かいことを気にし過ぎるというか、たぶん、効率の良いやり方があるはずだ、と思っているのだろう。
「どうでもいいのよ。風で落ちなければ大丈夫だから。好きにやってごらん」
ちょっとびっくりしたので、友だちに聞いてみた。
「うちも、なんでもやってくれる娘婿が干すんだけど、Tシャツでもジーンズでも広げないままホイホイかけていくから、乾いてもしわくちゃだったり、乾かなかったりで。最初は姑も口出さずに我慢していたけれど、たまりかねて指摘してしまいました。私の洗濯物でもないのにね」

最近はアメリカでも外に干すこと、太陽に当てることの良さが見直されているから、いきがってやってはみるものの、経験のなさは否めない。うちの娘婿も、タオルをハンガーにかけて干したために内側が生乾きで、娘が指摘すると、「だったら自分でやれよ!」とブチ切れたそうな。

タオルやシーツは斜めに引っ張らずに垂直方向に引っ張るとか、ワンピースの身ごろの縫い目を軽くのばすと乾いた時につらなくていいとか、シャツも広げてパンパンと手のひらで両側からたたいておくとシワにならないとか、日々の経験が物を言うのだ。

今まで考えたこともなかったが、たくさんの洗濯ばさみがぶら下がっている、角型物干しハンガーがなんとも効率が悪い。5個ほどの洗濯ばさみが4列ほどの、あれだ。ソックスを乾かすのなら、20枚、10足乾かせる。では、ハンカチはどうだろう? 両端にそれぞれ挟むと、4枚だけ。その間の洗濯ばさみは使われずに空いたまま。誰がこんなハンガーをデザインしたのか。子どもを育てたこと、洗濯をしたことのない人なのかな? それにしても、これまで誰も苦情を言わなかったのかしらね?

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。