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日本のお巡りさん 〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第23回 日本のお巡りさん

娘が引っ越しで置いていった自転車のタイヤに、空気を入れたい。確か近所の交番の隣に自転車屋があったはず。自転車を押して行ってみると、戸は開いているのに誰もいない。隣の交番で聞いてみた。

「隣の自転車屋さん、いないみたいなんですけど、空気入れってありますか?」

「ああ、ちょっと待ってね」

と言って奥から出してきてくれて、私が空気を入れようとするのを見ている。うまくいかない。するとお巡りさんは、スーッと手を出して入れてくれる。と思ったら、やはりうまくいかない。

「タイヤがおかしいのかな?」

「すいません。やっぱり隣に行ってみます」

お巡りさんは空気入れを戻しに交番の中に入った。窓を見ると「ただいまパトロール中」の案内板。日本のお巡りさんは、なんて粋なんだ!

自転車を直して、祐天寺に行ってみた。前の晩にテレビで見たお煎餅が祐天寺で売っているそうだ。ネット販売のほかに東京では数店舗でしか販売されていない。先代がいきなり倒れて、若い兄弟が四苦八苦して、つぶれそうなお煎餅屋さんを持ち直したという話だ。ちょっと高いけれど、おいしいお煎餅を作り出し評判が良いそうである。その名も「センベイブラザーズ」。小さな駅ビルらしき店は、いくら探しても見つからない。交番を訪ねてみた。3人ほどのお巡りさんが寄ってきて、所在地を調べてくれる。よくわからない。

「すいません。ちょっと自転車取ってきます。駐輪禁止のところに停めちゃったので」

と私のケータイを預けて、向こうがあれよあれよと戸惑っている間に自転車を取ってきた。別のお巡りさんが奥から出てきて、私のケータイを持っている。

「あそこにあるんだよね」

と説明してくれても、先ほど回った時にはケーキ屋と薬屋しかなかった。

「一緒に行きましょう」

と先導してくれる。

「あの、センベイブラザーズのお煎餅探しているんですけど」

「ああ、おいしいよね」

「えっ、食べたことありますか?」

「うん、もらったんでね」

などと話しているうちに、到着。先ほど何度も通りかかった、小物屋さん。小さなバッグとか、ちょっとしたアクセサリーとか売っているお店。

「ここで売っているんですか?」

「ほら、あそこ」

と指差したところのバスケットの中にあった! 自分でも買いに来ているのかもしれない。食べてみたかった「たまり醤油」はなかったが、焼いた生地の堅さが絶妙だった。

お巡りさん、ありがとう!

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。