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ブラボー、なおみちゃん。よく言ってくれたね!〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

みきこのシリメツ、ハタメーワク

ブラボー、なおみちゃん。よく言ってくれたね!

プロテニス大坂なおみ選手が5月31日、全仏オープンテニス試合後の記者会見を拒否。あらかじめその意向は表明していたが、速攻、大会からルール違反とし1万5,000ドルの罰金が科せられた。その晩の日本のテレビでは、コメンテーター、お笑い芸人などが「気持ちはわかるが、プロにあるまじき行為。ちゃんと理由を説明してからするべき」と、日本人特有の「お利口さん発言」が飛び交う。

翌日、彼女はSNSで理由を説明。話し上手でなく記者会見の前には緊張し、ストレスで3年前からうつ状態に苦しんでいた、この会見のやり方がアスリートの心の健康に配慮がされていないと感じていた、と。そして全仏オープンにみんなが集中できるように、とその後の試合を棄権した。

うつの状態の人に説明しろと言っても難しい。それが簡単にできるなら会見もしただろう。お笑い芸人が「嫌でもプロだから」と応じるのと、アスリート、しかもチームで動く選手ではなく、フィギュアスケートなど、個人の動揺で結果が左右される競技と、根本的な違いが見えないのかしら?

そんなことを考えていたら20年ほど前、イチロー選手の記者会見が行われなかったことを思い出した。北米報知に勤めていた頃、いつものスポーツ記者の急用で、私が行く羽目になってしまった時のこと。野球のことなど何も知らない私は、会見だけしっかりメモを取ろうと、張り切ってロッカールーム前で他の記者たちと待機していた。当時の規則では、日本のメディアはイチローさんに直接質問できず、全て記者クラブを通す。イチローさんにもストレスだったんだろうね。「今朝、何を食べましたか?」などという個人的な質問はNG。当日の試合に関してのみ。

時間つぶしに、その日購入した眼鏡をチェックしていた。半分から上がドライブ用に遠くが見えて、下半分は地図など間近が見えるもの。つけたり外したり、ロッカールームをぐるぐる見回していたのだ。しっかりカーペットが敷いてあるので待合室かと思っていた。奥の壁際で小柄なアジア人が後ろ向きにこっちを見ながら、着替えようとしている。眼鏡のチェックで下を見て、そしてそちらを見ると、黒い下着1枚になったアジア人。天井際の名前を見て、「おお、イチロー!」。向こうもきっと「変な日本のオバさんが遠眼鏡で自分を凝視している」と思っただろうね。

「今日は記者会見なしです」とアナウンスがあったのは、その直後。アメリカは女性記者もロッカールームに入れるのに加え、こういう記者がいるからストレスになるんだな。

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。