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スズメバチの巣〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第 34回 スズメバチの巣

庭のモサモサを剪定しようと思って見ると、オオムラサキツツジの枝に何やらぶら下がっていた。徳利か一輪挿しをひっくり返したような、直径15センチくらいの丸い蜂の巣に、3センチくらいの徳利の首が下に向かって出ている。私の胸辺りの高さだ。

2日間ほど、暇に任せて1時間ごとに観察していると、1度だけ3センチくらいの、頭がオレンジ色で足の長い蜂が出てきた。その後はシーンとして何も起こらないので、もしかしたら去年の巣なのかなと思いながら区役所に電話すると、スズメバチの駆除は負担してくれるそう。

巣はまだ完成していないらしく、その1匹が動き回っている。夜は他の蜂が集まってくるから昼間に駆除したほうが良いのだとか。だが20年くらい前、日本で夫に総武装させて駆除した時は、夜のほうが蜂は動作が鈍いからと、大きなコーヒー缶に入れて煙でいぶしたっけ。

シアトルでは、毎年夏に庭でBBQをすると、イエロージャケットが集まってくる。追い払ってもまた来るので、蜂用のトラップなど枝に仕掛けるのだが、土の中に巣を作るのもいる。そこで、新聞紙をねじり、火をつけたのを巣に差し込んで煙でいぶしたことも2、3回。うちの庭は蜂が多い。

子どもたちが小学生の頃に住んでいた家では、塀の石垣に蜂がたくさんいるからと、息子が友だちとホースで水をまいた。すると逆に額を刺され、当時流行っていた映画、エレファント・マンの顔になってしまい、翌日は学校を休ませた覚えがある。アレルギーらしく、次に刺されて気管支が腫れると窒息死することも考えられるため、医者は注射器を常時持つようにと言う。痛そうで怖いから、いざという時でも打てるかしら? とためらっている私に、その女医はヤクザのごとく腕をまくり、自分に刺してみろと畳みかける。子どもの命のためなんだぞ!と。

娘が刺されたのは、サンファン島のフェリーを待っていた時。缶入りのジュースの中に蜂が入り、知らずに飲んだため口の中を刺されたのだ。付近の店に駆け込むと、親切なカトリックのシスターが重曹をすり込んでくれた。即、痛みも引いて、腫れずに済んだ。アレルギーではなかったのが幸いだった。

そんなこんなで、蜂類は好きではないがそれほど怖くもない。自分で駆除しよう、と思い立ったら、すぐ行動! 夕方、暗くなる前にビニール袋を2重にし、そーっと下から包み込み、上を閉めて枝を切った。そのまま水を張ったバケツに入れ重石を置き、ひと晩寝かせて、さてオープン。やはり女王蜂1匹と卵が10個ほど。せっせと巣を作り、卵を産んでいる最中に仕留められたわけだ。同じ母親として少なからず同情もしたが、隣の家には小学生が2人いるし……。一件落着。

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。