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タトゥースリーブとスタンプラリー〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

みきこのシリメツ、ハタメーワク

タトゥースリーブとスタンプラリー

ハワイに住んでいる息子さんがいる方から相談された。彼の新しく付き合い始めた白人女性が左腕、肩から手首まで全部に入れ墨をしていると言う。

「どうも、結婚を考えているようでさ、どうしようかと思ってるのよ」

「入れ墨なの? タトゥーなの?」

「タトゥーなんでしょ、彼女は。でも私にしてみれば入れ墨だわ」

「だって、彼女の体なんだから、しょうがないじゃない?」

「そうは言うけれど、もし結婚したら、ハワイに会いに行くでしょ? 私、見たくないわよ」

「ハワイなら、暑いからカーデガンで隠すわけにもいかないわね。何が一体嫌なの?」

「その心意気が嫌なのよ。ねぇねぇ、見てちょうだいっていうような」

「自己顕示欲?」

「そうそう。最近の子だから、小さなタトゥーをかわいく、どこか自分だけに見えるところにするんなら、いいわよ。必要なら隠せばいいんだから。でもこれ見よがしにするって、何か心に問題があるように感じるのよ。私の大事な息子を任せられるかしら? しかも子どもが生まれたら、私の孫の母親でしょ?」

話はどんどん発展していく。

「孫は孫でしょ?」

「だけど、母親がタトゥーOKな子と、絶対ダメな母親を持った子とでは、その子の成長の過程で受け入れ方が違くなるじゃない? きっと孫もするわよ」と決めつける。

「日本に来て、一緒に温泉行けないってのも面白くないわね。その子(彼女)、日本のカルチャー知ってるの?」

「一応知っているけど、もうやってしまったから遅いわね」

もともと、入れ墨は罪人の島流し、家畜のお尻にする焼印のようなものだったわけで、その後のヤクザの唐獅子牡丹は、現在は芸術として認められている部分があるものの、温泉ではいまだに「お断り」が多い。娘の肩の小さなタトゥーを見つけられた時に、「次回からご遠慮ください」と言われたそうな。

「見たくない人の権利ってあるんじゃない? ヤクザだって普段は隠していて、これぞ! という時に、サーっと脱いで披露するって、ちょっとかっこいいけどさ。でもタバコだって吸わない人の権利、臭いが嫌だっていう人の権利だってあるんだから」

そうか、お風呂では見たくない人もいるわけだから。

「なんで腕にタトゥーしたか聞いてみれば?」

「息子に聞いたら、旅行が好きで、ネパールだとか、南アフリカだとか、行ったところの思い出を腕に入れて、片腕全部になっちゃったのよ。これをスリーブって言うんだってさ」

「なんか、JRのスタンプラリーだね。ははは」

「茶化さないでよ!」

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。