『Land of Mine』
(邦題『ヒトラーの忘れもの』)
第二次大戦中ナチスに占領されていたデンマークの海岸には、ナチスが埋めた200万個もの地雷が残されており、戦後、その地雷の多くはドイツ人捕虜の少年兵たちによって撤去された。デンマーク人も知らなかった史実を元に再現されたヒューマンドラマ。本年のアカデミー賞外国映画賞にデンマークからノミネートされた他、世界各国の映画賞を多く受賞している秀作だ。
ナチスを心底憎んでいるデンマーク軍のラスムスン軍曹(ローランド・ムーラー)は、地雷撤去の監督として11人のドイツ少年兵を引き連れ、海岸線に赴任した。彼は危険な作業をする少年らに憎悪をむき出しにし、食事も与えず、日々奴隷のように扱った。そんなある日、一人の少年が地雷によって吹き飛ばされた。呆然とする少年たち。それでも、リーダー格のセバスチャン(ルイス・ホフマン)は、地雷を撤去してドイツに帰ろうと仲間を勇気づけるのだった。
ほぼ全員素人の少年たちを起用し、描かれる過酷な日々。あどけない顔をした少年たちが、命と隣合わせで作業する姿が痛々しく、見続けるのが苦しくなり始めた頃、物語に変化が起きる。それは鬼軍曹の心の変化として描かれ、本作の持つ大きなテーマへと繋がっていく。
憎しみは永遠に続くのか? 憎しみが理解へと変わることは可能なのか? 鬼軍曹の少年らへの態度の変化を通して、見るものの胸に迫る問いかけの数々。本作は古い歴史的事件を扱っているのではない、今まさに私たちが直面している難民問題やテロの脅威にまっすぐ繋がる問いかけをしている、そう感じざるを得なかった。
オリジナル脚本と監督はデンマークの気鋭マーチン・サントフリート。ドキュメンタリー映画出身で、劇映画としてはアルコール依存症の女優を描いた秀作『アプローズ(Applause)』がある。地雷撤去に関する本すら書かれていない現状の中で、実際に海岸線に行き、聞き取りをして脚本を書き上げた。捕虜に地雷撤去をさせたのは明らな違法行為であり、デンマーク戦後の暗部を自ら描き出した若きデンマーク映画人の気概が伝わる。時代性のある反戦映画の名画として、ぜひ推薦したい。
シアトルは17 日からSeven Gables Theatreで上映中。
上映時間:1時間40分
[新作ムービー]