新作ムービー
スッキリし過ぎなクライム・サスペンス
『Money Monster』
(邦題『マネーモンスター』)
ジョディ・フォスターが監督し、ジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーが共演という豪華な顔ぶれで注目を集めているクライム・サスペンス。ニューヨークの金融街が舞台なので、フォスターの出た『インサイド・マン』やクルーニー『フィクサー』を思い出しつつ観たのだが……。
コミカルなトークで人気のある司会者リー・ゲイツ(クルーニー)の財テクTV番組が、銃を持った若い男(ジャック・オコンネル)に乗っ取られた。ディレクターのパティ(ロバーツ)は、犯人の要求通り番組を続行、前代未聞の人質事件が生放送されることに。犯人は、リーが推薦した株が暴落し全財産を失ったと視聴者に訴え、急激な暴落の理由を明かせとリーに迫るのだった。
銃を振りかざして激昂する犯人と爆弾チョッキを装着させれ縮こまるリー、そんな彼のイヤフォーンに冷静な声で指示を囁くパティ。有能な彼女のリードで放映される一触即発の事件のあらましが、緊迫感をもって描かれる導入部に釘付け。中盤から「急激な暴落」の理由が、コンピュータの誤動によるものだったという投資会社側の説明への疑惑が浮かびあがり、事件は思わぬ方向へ。意図的に株式操作をした投資会社のダークサイドへと迫っていく。
トントン拍子で明かされる投資会社の汚いやり口。「生放送なのにこんなに早く謎が解けちゃうの?」という疑問に目をつぶり、それはそれで胸のすく感覚。だが同時に、スッキリし過ぎてリアリティに欠けるのだ。金融業界を舞台にしながら、クルーニーと犯人は善玉で、投資会社は悪玉という色分けはやや単純ではないか。
こんな感想を持つのも、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』を観たせいだろう。一見複雑そうで実は欲望だけで動いている金融業界の真実を暴きだした快作『マネー・ショート……』の透徹した視点と比べると、本作には判官贔屓的ツメの甘さがあり、脚本にかなり問題アリとみた。フォスターがサスペンス映画の監督としても優れた手腕を見せているだけに残念だ。
シアトルはシネコン等で上映中。
上映時間:1時間38分。
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