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テニス界の元スター選手の新たな0 ゲーム
Challengers
(邦題「チャレンジャーズ」)
男性同士の恋愛を描いた「君の名前で僕を呼んで」で世界の注目を浴びたイタリアのルカ・グァダニーノ監督の最新作。「スパイダーマン」「デューン」シリーズなど、多くの大作に出演するアメリカの人気女優ゼンデイヤを中心に据え、世界トップを走るテニスプレイヤーたちの恋愛と友情を描いた秀作だ。
幼なじみのパトリック・ツヴァイク(ジョシュ・オコナー)とアート・ドナルドソン(マイク・ファイスト)は親友同士で、2006年の全米オープンテニス・ジュニア男子ダブルスで優勝。そんなふたりが、同大会の女子シングルスで、タシ・ダンカン(ゼンデイヤ)の驚異的なプレイを観戦し、同時に電撃的な恋に落ちる。
ホテルの部屋でどうしたら彼女の気を引くことができるかと話す2人の元に、なんとタシが訪ねてくる。3人は打ち解けしばらく楽しい時間を過ごすのだが、帰り際に男子シングルで勝った方に自分の電話番号をあげる、という言葉を残して、タシは部屋を後にする。宿敵となったパトリックとアートは決勝で対戦し、パトリックが優勝。タシとパトリックは付き合い始めるのだった。数年後、プロになったパトリックと、スタンフォード大学に進んだタシとアートはテニス界のトッププレーヤーとして活躍していた。だが、タシが致命的な負傷したことで、3人の運命が交錯していく。
テニスプレイヤーとしての夢をくじかれたタシは、コーチになってテニスへの夢を実現しようとするが、夢を打ち砕かれ屈折した思いを抱え、ときにアートらの信頼を裏切ってしまう。そんなタシをそれぞれの思いで愛し続けるふたりの男たちの姿は、切なくも清々しく好感が持てた。作品の多くの部分を占めるテニスプレーの激しさ、厳しさ、美しさをとらえた映像と主演3人の渾身の演技も見応えがあった。
いわゆる三角関係ものであるが、とかく描かれがちな互いへの憎しみや嫉妬などのドロドロとした感情には一切フォーカスせず、男ふたりの友情・信頼やふたりを同時に愛するタシの揺れる思いという3人のデリケートな心情を丁寧に描きあげ、感動のエンディングへ導いていくストーリーは、出色の出来栄えだった。
脚本は今年のアカデミー賞作品賞・脚本賞ノミネートを始め、数々の賞レースを席巻した映画「パスト・ライブス/再会」を手がけたセリーヌ・ソン監督の夫である劇作家のジャスティン・クリツケス。2人にはこれからも繊細な大人の恋愛を描き出し、観客をハッとさせてほしい。
Challengers
(邦題「チャレンジャーズ」)
写真クレジット:Amazon MGM Studios
上映時間:2時間11分
シアトル周辺ではシネコンなどで上映中。