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The Wild Robot/(邦題『野生の島のロズ』)

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ロボットがヒナの親になったら?


The Wild Robot
(邦題『野生の島のロズ』)

子どもだけでなく、子育て真っ最中の親や大人の心もグッと掴むファミリー向けアニメ映画を紹介しよう。製作は大ヒットした「シュレック」シリーズのドリームワークス・アニメーション、監督はやはり大ヒットした「ヒックとドラゴン」シリーズのクリス・サンダースだ。

舞台は近未来。ある無人島で人間をサポートするために作られたアシスト・ロボットが目覚める。事故で島に流れ着いたROZZUM(ロッザム)7134、通称ロズ(ルピタ・ニョンゴ )。周囲にサポートすべき人間はおらず、島の動物たちに「何か御用はありませんか」と聞いて回るが、反応はない。挙げ句に崖から落ち、ガチョウの巣を潰してしまう。親鳥はいなくて卵だけが残されているのを発見したロズは、手にとって守ろうとするが、そこへ現れた空腹のキツネのフィンク(ペドロ・パスカル)に卵を奪われる。取り返そうと追いかけている最中に卵がかえってしまう。ヒナは初めて見たロズを親だと思い込み懐いてくるが、鳥の育て方などプログラムされていないロズは困惑するのだった。

自然界に放り出されたロボットが、幼いガチョウの子の親になったらどうなるか? そんなユニークな設定から膨らんでいったストーリーだ。ロズはオポッサムの母(モーリン・オハラ)から子育てのアドバイスをもらいながら、油断ならない存在ではあるものの自然界について教えてくれるフィンクと共にヒナのブライトビル(キット・コナー)を育てていく。

成長したブライトビルは体が小さく、ロボットみたいな話し方をして仲間にからかわれるが、そんなことに構っている暇はない。渡り鳥で水鳥でもあるガチョウたちは、冬になったら温暖な地へ飛び立たなければならない。ロズはフィンクと共に、ブライトビルに泳ぎ方や飛び方を教えようと必死だ。飛び方を教えるワシ(ヴィング・レイムス)、ガチョウの長(ビル・ナイ)、森の王者のクマ(マーク・ハミル)といったキャラクターたちが手助けする中、ロズに親としての感情が次第に芽生えていく。

アクションや笑いをふんだんに織り込みながら、自然と機械という対照的な要素を、限りなく優しく、時おり厳しく見つめ豊かに展開していく。ピーター・ブラウン原作の絵本『野生のロボット』の世界観がよく描けていた。

ロボットがハートを持ったら? 愛を感じたら? そんなテーマはこれまでにも多くのSF映画やアニメショーンで描かれてきた。筆者が好きなピクサーの『ウォーリー』では、地球に一台だけ取り残されたロボットの孤独と恋が描かれていた。ChatGPTのようなAIが普及し、人間と機械の会話が日常になりつつある今、ロボットが人間と同じように振る舞うことをただプログラムされているからという説明だけでは納得できない。ひょっとしたら? と心揺さぶられるのは当然のことだろう。しかし、現実はどこへ向かっていくのか? 楽観的になれない怖さを秘めた未来が私たちの前に迫っている気もする。


The Wild Robot

(邦題『野生の島のロズ』)

写真クレジット: Universal Pictures
上映時間:1時間42分
シアトルはシネコンなどで上映中。

土井 ゆみ
映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。