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Wicked /
『ウィキッド ふたりの魔女』
ホリデーシーズンにぴったりな、家族で楽しめるミュージカル映画を紹介しよう。2003年の初演以来、トニー賞やグラミー賞をはじめ数々の賞を受賞し、大ヒットを続けてきた舞台ミュージカルの映画化作品だ。生い立ちや風貌、性格が全く異なる二人の魔女が、反目し合いながらも友情を築いていく物語。本作はその第一部を描いている。
物語の舞台はオズの国。魔術師や魔女が存在し、動物が人間のように話す世界だ。冒頭、人々が西の悪い魔女の死を祝う中、善き魔女グリンダ(アリアナ・グランデ)も喜びの歌を披露する。しかし、彼女はその「悪い魔女」を知っていたと語り、シーンは数年前のシズ大学時代へ。
車椅子に乗る妹(マリッサ・ボーデ)とともにやってきたエルファバ(シンシア・エリヴォ)は、全身が緑色の肌を持つ。奇異の目で見られる彼女とは対照的に、山ほどの荷物を持ちピンクづくめで登場したグリンダは注目の的だ。そんな2人を同室にしたのは、魔法学部モリブル夫人(ミシェル・ヨー)で、2人は正反対の性格からたびたび衝突する。モリブル夫人は生まれながら協力な魔法の力を持つエルファバの可能性を見抜いて個人指導を始める。やがてエルファバは念願だったオズ大王に会う機会を得る。彼女は学内で動物の教授たちが不当に締め出されている現状を訴えるために大王に会いたいと思っていたのだった。しかし・・・。
肌の色で親からも疎まれてきた地味で大真面目なエルファバと、能天気で人気者グリンダの対比が面白い。彼女が、エルファバのメイクオーバーを試みるのだが、まったくの的外れ。ピンクのドレスをまとって自己愛を歌い上げ、ハンサムな王子(ジョナサン・ベイリー)が現れれば近づき結婚を夢見る。自己中の極みとも思えるキャラなのだが、どこか憎めない。難役だと思うが、歌唱力抜群のグランデが好演している。
同時に、背景ではアメリカ社会に根を広げるさまざまな差別を描きこんでいる。エルファバが直面する差別や、高い知能を持つ動物を檻に押し込めて自由を奪うシーンは現実の移民政策や社会的な不平等を思い起こさせる。また裏切られた障害のある女性の心情も描かれ、それぞれを分かりやすい歌詞にのせて訴え、歌い上げられていく。まさにミュージカルの真骨頂、舞台が大ヒットした理由も納得だった。作詞・作曲家は数々の音楽賞を受賞しているベテラン、スティーヴン・シュワルツ。監督はダンス映画などを多く手がけ、「クレイジー・リッチ!」を大ヒットさせたジョン・M・チュウだ。
圧巻なのは、エンディングだ。自らの力と使命を知ったエルファバが大ヒットした「ディファイング・グラビティ」を歌う。スピード感のある映像と共に、他人のルールに逆らって制限なく生きたい、とエリヴォが力強く歌い、飛び回る最高のクライマックスだ。
果たして、魔力のないグリンダがどうして善き魔女となったか、なぜ西の悪い魔女は死んだのか? 謎を残したまま第1部は終わり、スクリーンにクレジットが流れ出す頃には、第2部が待ち遠しくてならなかった。
Wicked
(邦題
『ウィキッド ふたりの魔女』)
写真クレジット:Universal Pictures
上映時間:2時間40分
シアトル周辺ではシネコンなどで標準、3D、IMAXにて上映中。
image sources
- Wicked-1: © https://soysource.net
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